[合唱団 響] [栗山 文昭] [大島 博] [澤江 衣里] [栗友会]

合唱団 響

Members 栗山文昭を指揮者・音楽監督として1981年「合唱団OMP」を結成し、2001年1月「合唱団 響」と改名。結成当時より、古典から現代に至る国内外の優れた合唱作品に学び、演奏経験を積むとともに、邦人作曲家(三善晃、林光、池辺晋一郎、新実徳英、西村朗、三宅榛名、信長貴富ほか)への委嘱を中心に活動している。また、1992年オレゴンバッハフェスティバル、1996年第4回世界合唱シンポジウム&フェスティバル(シドニー)、2001年ベルギー・南フランスでの演奏を行ない、海外に日本の優れた現代の合唱作品を紹介する役割を担った。主催公演のほか、国内外の演奏旅行、レコーディング、そして栗友会合唱団の一員としてプロオーケストラとの共演等の活動を行なっている。1994年まで全日本合唱コンクールに出場し、コンクール大賞2回を含む、9回の金賞を受賞。
OMPの時代より培ってきた「過去に学び、現在(いま)()き、未来を創る」精神を引き継ぎ、栗山文昭氏曰く「360°合唱」を夢見て、合唱が楽しく開放された文化として発展するためにつくすことを目指している。

栗山 文昭(音楽監督,指揮者)

KURIYAMA 1942年島根県生まれ。島根大学教育学部特設音楽過程卒業後、二期会合唱団、東京混声合唱団で研鑽を重ねる。合唱指揮法を田中信昭、指揮法を高階正光に師事。2002年中島健蔵音楽賞、2015年度下總皖一音楽賞受賞。現在12の合唱団を有する「栗友会」の音楽監督として、NHK交響楽団、東京都交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団など多数のオーケストラでコーラス・マスターを務める。「栗友会」各団体での演奏においては現代に立脚しつつ時代を俯瞰したプログラムを心掛けている。また、舞台芸術としての合唱表現の可能性を広げるべく、演劇と合唱との融合を目指した作品を多く世に出している。東京藝術大学講師、武蔵野音楽大学教授を経て、現在武蔵野音楽大学特任教授、島根県芸術文化センター「グラントワ」いわみ芸術劇場芸術監督。合唱人集団「音楽樹」芸術顧問。

演奏会2019プログラムから
徒然に−合唱団響編

記録ではなく、曖昧な記憶で書くことになる。

1994年にノルウェーのリレハンメルで冬季オリンピックが行われた。次は日本、長野で4年先と決まっていた。その年、その長野に文化交流の一環として、ノルウェーから合唱団が送られた。グレックス・ヴォカリス(Grex Vocalis)である。
グレックスの最初の予定では、長野県内を演奏して周るだけだったようだ。できれば東京でも演奏したいとのこと。その受け入れ先として、日本合唱指揮者協会(JCDA)に要請があった。

当時わたしは当協会の副理事長であった。恒例の理事会でこの件について話し合いがあり、かなりの議論の後、断ることになった。わたしは是非とも、との意見だったが、多数決という民主主義は悲しいものである。
せっかくの機会を実現したいと、わがままな栗山の独裁制で成り立つわたしの仲間たち「栗友会」で引き受けることにした。

6月22日、川口リリア音楽ホールで、ノルウェーと日本の小さな国旗をたくさん飾っての、かなりお祭り色豊かな演奏会が始まった。20人位だったと思う。美しく着飾った民族服の団員の、毛足の長いビロードのような声で会場が満たされていった。気品のある佇まい、それに優しいユーモア、広がるピアニシモ、柔らかいフォルテシモ、純正調だの平均律だの関係ないからだを包むハーモニー。ああ、迎えてよかった。

演奏会の倖せをいっぱい溜め交流を兼ねたレセプションが始まる。興奮さめやらない仲間たちと談笑していたわたしに、美しく波打つ銀髪、ステージでの民族服、バランスのとれた体格のいい男性が近づいてくる。演奏会の始まる前にチラッと挨拶をしたが、あらためてその演奏後のほほえみと音楽のオーラに包まれた合唱指揮者、カウンターテノールのカール・ホグセット(Carl Høgset)との運命的な最初の出会いが、ここであった。

昨年6月2日、カール・ホグセットは亡くなった。1941年11月3日生まれ。享年79歳。

出会いから27年、ほぼ毎年のように会い、かれのエネルギッシュな諦めない練習を見、また、ビール、日本酒、ワインなど、心行くまで杯を交わし、彼の音楽へ向かう心、年齢を重ねたいまに行っている合唱活動などを、飽きることなく話し合った。畏友安保洋子さんも、朝からの講習会、練習での通訳の疲れ、かなりの量のアルコールをものともせず、カールとわたしの思いとなって、熱く熱くこころを渡してくれた。

カールはわたしより3ヶ月ばかりお兄さん。彼の住むユーラシア大陸の西北の極のノルウェーと、わたしの住む東のはずれの飛び地の日本は、ふたりの裡ではひとつになる。

《歩くことをやめて、はじめて知ったことがある。歩くことは、ここではないどこかへ、遠いどこかへ、遠くへ、遠くへ、どんどんゆくことだと、そう思っていた。そうではないということに気づいたのは、死んでからだった。もう、どこにもゆかないし、どんな遠くへもゆくことはない。そうと知ったときに、じぶんの、いま、いる、ここが、じぶんのゆきついた、いちばん遠い場所であることに気づいた。この世からいちばん遠い場所が、ほんとうは、この世に、いちばん近い場所だということに。》(長田弘『花を持って、会いにゆく』より)

カールが歳を重ねていま行っていること。それは、年齢に関係なく「だれもが歌える合唱団」を作ることだ。お年寄りが多いと聞いたが、初めて合唱にふれるひとたちを教え、かなりのひとびとが集まった合唱団を連れ、実際にイタリアなどに何回も演奏旅行を行っている。それは、とても大切なことだ、とも話してくれた。

わたしの裡では、合唱団響に重なった。創立以来、誰でも四回の練習に参加すれば、年齢は関係無く入団できる。(栗友会の団体はすべてそうだが、響は顕著なのだ)

もっともっとの物語があり、今日演奏会をむかえる。カールとの語り尽くせない物語は、演奏が語るだろう。寄りし、集まりし者たちによって。音程、声を超越し、不揃いに並ぶ者たち。いいんだな、かれらは。
台風と仲良く練習した三連休の次の月曜日。保谷、書斎にて。

過去のプログラムノート


大島 博(ヴォイス・トレーナー)

熊本県生まれ。中央大学法学部卒業後、東京藝術大学音楽学部声楽科に入学。渡辺高之助、高丈二、原田茂生、中山悌一の各氏に師事。86年、同大学院在学中にミュンヘン音大に留学、E.ヘフリガーに学ぶ。90〜91年D.フィッシャー=ディースカウに師事。95年東京藝術大学大学院博士課程を修了。宗教曲の分野で、初期バロックから現代作品まで幅広いレパートリーを持ち、とりわけバッハの演奏者として定評がある。また、ドイツ・リート及び日本歌曲の演奏にも積極的に取り組んでおり、自主企画によるリサイタルに加えて各地での客演も数多い。96年からは〈ドイツ・リートのたのしみ〉と題した、ドイツ歌曲を知るためのレクチャーを継続中。近年は、さらに合唱指揮者、発声指導者としても幅広く活動している。国立音楽大学、立教大学大学院非常勤講師。

澤江 衣里(ヴォイス・トレーナー)

東京藝術大学大学院修士課程及び博士課程修了。英国歌曲研究により博士号取得。日本学術振興会より奨学金を得て、ロンドンに短期留学。日本音楽コンクール等において上位入賞。2006年よりバッハ・コレギウム・ジャパンのソリストおよび声楽メンバーとして活躍。《ロ短調ミサ曲》、《ドイツ・レクイエム》、《カルミナ・ブラーナ》や《メサイア》など多数の作品でソプラノソロを務める。しなやかで温かみのある歌声を生かした歌唱で様々なレパートリーを持つ。NHKテレビ番組『名曲アルバム』でのバッハのアリアの演奏や、NHK-FM『リサイタル・ノヴァ』に出演、好評を得た。東京藝術大学附属音楽高等学校非常勤講師。

栗友会(りつゆうかい)

栗山文昭を音楽監督兼指揮者とする4つの混声合唱団と、6つの女声合唱団と、2つの男声合唱団で構成されている。各団が独立して、定期演奏会、演奏旅行、レコーディング等を行ないながら「栗友会」としても活動している。
宇都宮室内合唱団ジンガメル, 合唱団響, コーロ・カロス, Youth Choir Aldebaran
女声合唱団青い鳥, 合唱団るふらん, うつのみやレディーシンガーズ晶<AKIRA>, 女声合唱団彩, 女声合唱団九月の風, 松本女声アンサンブルAZ
Tokyo male choir KuuKai, うつのみやおとこコーラス粋狂座

主な活動としては、1988年6月にブレヒト作、長谷川四郎訳『子供の十字軍』を青島広志、新実徳英に委嘱、加藤直演出で初演。93年「地球の詩 -三善晃合唱作品の夕べ-」を開催。94年ノルウェーのグレックス・ヴォカリース初来日公演主催。ルワンダ難民の子供たちにクリスマスプレゼントをとチャリティーコンサート主催。95年エストニアのエレルヘイン少女合唱団招聘に参画、招待演奏会主催、2002年「だかあぽこんさあと」(栗山文昭指揮生活30年・中島健蔵音楽賞受賞記念)、2003年「にもんめのにいみとくひでさん&にしむらあきらさん」、2004年「さんもんめのみよしあきらさん」、2006年「よんもんめの はやしひかるさん てらしまりくやさん」、「ごえん・ごちゃごちゃ・ごもんめ」、2009年「ななもんめコンサート」など。

またオーケストラとの共演は、1992年「交響的変容」(水野修孝作曲)、 97年 東京交響楽団(以下東響)/石丸寛「ブラームス:ドイツ・レクイエム」、 98年 新日本フィルハーモニー交響楽団(以下NJP)/朝比奈隆「ベートーヴェン:交響曲第9番」、東京フィルハーモニー交響楽団/大野和士「ヘンツェ:交響曲第9番」、 99年 NJP/岩城宏之「リゲティ:レクイエム」、東響/大友直人「シュミット:詩篇47番」、ベルリン・ドイツ交響楽団/ケント・ナガノ「マーラー:交響曲第3番」、 2000年 東京都交響楽団(以下都響)/ガリー・ベルティーニ「メンデルスゾーン:真夏の夜の夢」、NJP/井上道義「マスカーニ:カヴァレリア・ルスティカーナ,レオンカヴァレロ:道化師」、 01年 NJP/クリスチャン・アルミンク「ヤナーチェク:グラゴル・ミサ」、東響/大友直人「黛敏郎:古事記」、 02年 NJP/ゲルハルト・ボッセ「ベートーヴェン:交響曲第9番」、 03年 都響/井上道義「ショスタコーヴィチ:交響曲第3番(メーデー)」、東京フィルハーモニー交響楽団/岩城宏之「黛敏郎:涅槃交響曲」、NJP/佐渡裕「ベートーヴェン:交響曲第9番」、 04年 読売日本交響楽団(以下読響)/ユーリ・テミルカーノフ「オルフ:カルミナ・ブラーナ」、NJP/井上道義「バカロフ:ミサ・タンゴ」、 05年 ロイヤルフランダースフィルハーモニー管弦楽団/ヘレヴェッヘ「ベートーヴェン:交響曲第9番」、新交響楽団(以下新響)/飯守泰次郎「ラヴェル:ダフニスとクロエ」、NJP/アルミンク「マーラー:交響曲第2番ハ短調 復活」、 06年 読響/セゲルスタム「マーラー:交響曲第2番ハ短調 復活」、NJP/アルミンク「オネゲル:火刑台上のジャンヌ・ダルク」、新響/小松一彦「黛敏郎:涅槃交響曲」、NHK交響楽団/アシュケナージ「ラヴェル:ダフニスとクロエ」、 07年 NJP/アルミンク「ワーグナー:ローエングリン」「J.シュトラウスU:こうもり」、サンクトペテルブルク交響楽団/井上道義「ショスタコーヴィチ:交響曲第2番(10月革命に捧ぐ),第3番(メーデー)」、 08年 NJP/アルミンク「ブリテン:戦争レクイエム」「R.シュトラウス:薔薇の騎士」、都響/ボージッチ「ヴェルディ:アイーダ」、NJPワールド・ドリーム・オーケストラ/久石譲「久石譲in武道館」、 09年 NJP/フランス・ブリュッヘン「ハイドン:天地創造」、NJP/小澤征爾「メンデルスゾーン:エリア(日本語上演)」、NJP/アルミンク「シュミット:七つの封印を有する書」「マーラー:千人の交響曲」、サイトウキネンフェスティバル/小澤征爾「ブリテン:戦争レクイエム」、 10年 NJP/アルミンク「ブラームス:悲歌」「ヴェルディ:レクイエム」、サイトウ・キネン・オーケストラ/小澤征爾「ブリテン:戦争レクイエム」、 11年 NJP/ブリュッヘン「ベートーヴェン:交響曲第9番」「バッハ:ミサ曲ロ短調」、NJP/アルミンク「ブラームス:運命の歌」 など


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藤平 <thompay@mbe.nifty.com>
合唱団 響