コンサート拝聴記'96


第15回合唱団『弥彦』〜夜と谺(こだま)


日時:1996年 8月25日(日)18:30開演
場所:弥彦総合文化会館大ホール(新潟県弥彦村)
曲目:三善晃作品集
    女声合唱 爪紅/悲しみは/空を走っているのは/ラ・メール
    男声合唱 一人は賑やか/路標の歌
    混声合唱 雪の窓辺で/待ちぼうけ/カチューシャの唄/佐渡おけさ

   対談<宗左近、三善晃>
    委嘱作品について

   委嘱初演
    夜と谺(宗左近詩・三善晃曲)

   唱歌の四季
    朧月夜/茶摘/紅葉/雪/夕焼小焼
 PC-VAN SIG『クラシックコンサートホール』より転載&編集

#7393/7393 大ホール
★タイトル (CLASSIC1)  96/ 8/26  21:31  (115)
演奏会>第15回合唱団『弥彦』〜夜と谺(こだま)    唐澤
★内容
 新幹線で燕三条まで約二時間。そこから超ローカル・弥彦線で…と思ったので
すが、あまりの本数の少なさにタクシーを使ってしまいました。(3660円)
 弥彦総合文化会館大ホールは、山の中です。向かいの山の斜面にはロープウェ
イがあり、山の頂上からは佐渡島が見えるそうです。
 当地は温泉地であり、文化会館の向かいには競輪場がある他はなんにもない。
 合宿講習会にはまことに適した場所といえましょう。(歓楽街が後ろに控えて
いたら午前中の練習が出来んじゃろう(笑))

 ホールに着くと、聴きに来た(今回は出演しない)合唱団OMPのメンバーが
三々五々集まってきていました。ホールをのぞいてみると、最後の練習中。(予
定時間を大幅に過ぎて開演ぎりぎりまで練習していました)

 こんかい弥彦に集まったメンバーは過去最大で、200人になったそうです。
 舞台からこぼれんばかりでした。

                                  ----*----

 今回の曲はすべて三善晃作、編曲だそうです。

●女声合唱 爪紅/悲しみは/空を走っているのは/ラ・メール

 なんだかとても穏やかな演奏でした。
 普段激しい合唱曲ばかり聞いているので、異質な感じ。女声合唱もなかなか聴
かないですし。

●男声合唱 路標の歌/一人は賑やか

 「女声合唱が静かだったので男声合唱はにぎやかに行きたいと思います。」
 と指揮者のMC
 一人はにぎやかは、男声合唱版は初編曲だそうです。今回の編成ではトップテ
ナーが少ないということで、バランスが難しかったようですが、今後もどんどん
歌われていって欲しい曲であると思いました。なかなか良い曲/編曲です。

●混声合唱 雪の窓辺で/待ちぼうけ/カチューシャの唄/佐渡おけさ

 待ちぼうけは、曲の中でじゃんじゃん転調してめまぐるしくとても面白い編曲
でした。この曲は今後色々なところで流行ると面白いな。
 佐渡おけさは、もう一つ盆踊り風の楽しい感じが欲しかったと思います。同じ
三善先生の阿波踊りは爆発的なパワーを感じるのですが、ああいうのを期待して
いました。
 演奏でもっとよくなるか…全体的にゆっくりのテンポではありますが、その中
でのキレがあると良いんじゃないでしょうか。
 太鼓が入りましたが、団員の中から急遽指名を受けての演奏らしく、もうひと
がんばりノリを作って欲しかったです。あと、伴奏は、ピアノと鈴もはいり、
面白い曲だと思います。

●対談<宗左近、三善晃> 委嘱作品について

 … 休憩 …

●夜と谺(宗左近詩・三善晃曲)
 詩集は「藤の花」と言います。詩人の宗左近氏が子供の頃、北九州の実家に父
の丹精した藤の花があったそうです。
 花の印象を頼りに書かれたこの一行詩集から、氏が25歳ぐらいの時、東京大空
襲、B29の落とした焼夷弾のなかを母とともに逃げまどった経験を、詠った作品
の中から取って、三善晃が作曲した物です。

 三善氏は美しく、厳しく激しい曲を書きました。
 冒頭の
 「夜が真昼 鳴き声たちの火の飛沫」
 という、記憶のなかの情景にズームアップしていくような緩やかだがシンとす
る響き。そして、眼前いっぱいに立ちふさがる激しい「火の飛沫」

 一行詩は、次々と燃える詩の情景を詠います。

 そして、クライマックスに向かって、飽和していく音響、響きと叩くような
リズム、叫び。

 「火をつけられなくて闇 つけられて闇 殺さなくて闇 殺して闇」
 「炙られて火 炙られなくて火 目をあけて火 目を閉じて火」
 「空燃える 地より天への大瀑布」

 そして、視線はロングに退いていくのだけれど、もはやどこまで退いても視界
いっぱいの炎。
 そして記憶はいっぱいの炎のなかで途切れ、最後に静かに鎮魂の祈りのように
響いて曲を閉じます。
 「曼珠沙華八十八万本 狂い咲きした夜でした」

  …

 たった三日で曲を仕上げなければならないという制約のなかで、弥彦合唱団は
本当に良くこの曲を演奏したと思います。ぜひとも近いうちに、またじっくりと
練り上げて再演されるように期待いたします。

●唱歌の四季
    朧月夜/茶摘/紅葉/雪/夕焼小焼

 最後は和やかに楽しく歌って終わりましょう。という感じですね。
 三善先生の編曲は面白いです。

 最後の「夕焼小焼」は、歌いながら客席に降りていき客席を取り囲むといった
演出。アンコールには客席と一緒にもう一度「夕焼小焼」という具合でした。
 大層受けていました。私の隣のおばさんも歌っていた。

唐澤

唐澤清彦