コンサート拝聴記'96


合唱団OMP & コーロ・カロス ジョイントコンサート・感想


日時:1996.7.21
場所:アミュー立川大ホール
出演:栗山文昭/コーロ・カロス、合唱団OMP
曲目:バード/4声のミサ           <カロス>
   2つのオーストラリア民謡(信長貴富編曲)<OMP>
   柴田南雄/追分節考           <カロス>
   三善晃/カムイの風 ー青ばと物語ー   <OMP>
   武満徹/混声合唱のための うた     <合同>
   武満徹/小さな空            <合同>
   三善晃/阿波踊り
   信長貴富編曲/ふるさと

以下、PC-VAN SIG『クラシックコンサートホール』より転載&編集

#7310/7310 大ホール
★タイトル (DBM51153)  96/ 7/22  21:19  ( 89)
演奏会・ざらしの日記(20)  野ざらし
★内容

合唱主体のコンサートにいくのは初めて、プログラムも普段なじみのない曲
が多かったのですが、なかなか新鮮な経験で楽しめました。

バードは、ほとんど初体験でしたが、抑制された響きとややロマンティック
で身振りの大きいクライマックスでの表現の対比が印象的でした。ただし、
私は現代におけるスタンダードな表現がどんなものなのかまったく知らない
ので、この評があたっているかどうかは定かではありません。

オーストラリア民謡、これはみなさん楽しそうに歌ってらしてよかったです
ね。団員の方のアレンジで、今回のオーストラリア訪問用のピースというこ
とらしい。林さんと川嶋さんは向かって舞台下手の上方で歌ってらっしゃ
いましたが、あまり、じっとみていると目があっちゃいそうで照れ臭いので、
栗山さんの指揮ぶりを中心にみておりました。

追分節考、これも柴田南雄のシアターピース初体験でした。女性合唱は舞台
に残り、男性合唱団員は客席にちらばって木曽の馬追い歌を歌いながらふら
ふら歩くという趣向。栗山さんの舞台上からの番号札による即興的な指示に
あわせて、特定の曲が特定のタイミングで歌われるという仕組みらしいので
すが、二系列ある記号の意味の違いまではわかりませんでした。

これは明らかに客としても舞台をじっと見つめてる意味はない曲だと思った
ので、後ろをむいたり横をむいたりしながら聞いていました。本当のことを
いうと僕も席をたってどっかその辺に寝そべって聞きたかったくらいで、こ
ういう曲でも客だけは相変わらず小市民的道徳観念を順守しつつお行儀よく
していなければならないのは、ちょっと残念な気がしますね。まあ、これは
ちょっとないものねだりかもしれないけど。

カムイの風は、三善さんの新曲で今回のオーストラリアツアーで初演される
ための「試演」だとか。OMPの曲の中ではこの曲が一番面白かったです。
林さんの貴重な事前の解説は残念ながら読んでいなかったのですが
民族色の濃い野生的な舞
踏風のところは栗山さんの指揮も力強く、私も思わず席から身を乗り出しな
がら聞いてしまいました。ピアノ伴奏もそれなりに親しみやすく、これなら
オーストラリアの人達にもうけるんじゃないでしょうか。

最後は武満さんの混声合唱のためのうた、OMPとコーロカロス合同による
大編成のフィナーレとなりましたが、恐ろしいことに私にとってこれらの曲
は石川セリがスタンダード/すりこみになってしまっているため、終曲のさ
くらを除いてかなりの違和感をおぼえました。これは合唱団や栗山さんの表
現の問題というよりは、歌詞を含めて武満さんの曲自体がもはや、多少時代
の風にふかれてちょっと古めかしいものになってるんからなんじゃないかな、
とも思いました。(こんなこといったらおこられちゃうんだろうな)

特に「死んだ男の残したものは」のシリアスそのもののドラマティックな表
現には、正直いうとちょっと照れ臭いものを感じます。昔、聞いてた吉田拓
郎の歌(「人間なんて」とか「知識」とか)や太宰治やレイ・ブラッドベリ
の小説にも似たような感覚を覚えるんですけどね。ま、これは私だけの病気
なのかもしれないので、あまり気にしないでください。

アンコールはみなたいへん楽しかったです。特に2曲めの阿波踊りは傑作で
ソロで一踊り、
ばーんとはじけた表現をみせてくれたお姉さんには喝采を送りたいと思いま
す。川嶋さんのとなりの人だったから、次はいよいよ川嶋さんのソロダンス
かと思って固唾をのんで見守っていたんですよ(^^)。

3曲目の「ふるさと」は、技巧の面では三善さんやバードの曲とは比べ物に
ならないほどのシンプルなものだったと思うのですが、みなさん実に気持ち
よさそうに歌ってらして、また聴衆の皆さんも心から曲に共感を感じている
のが手にとるように感じられてすばらしかったですね。

かたやプロとはいいながら、ワーグナーのワルキューレみたいなリヴァイア
サン的作品と格闘しながらも、安いだけがとりえだとか、卓袱台だの安食堂
だの(しかも場末の(^^))さんざんいわれている人達が一方にいて、か
たやこんなにシンプルな曲を気持ちよく歌って満場の共感をやすやすとえて
しまう人達がいる。まあ、分裂、四散、変容、粒子化を続ける日本の文化状
況を反映した時代の一こまを垣間見たというところでしょうか。

全体を総括すれば、栗山さんの気合のこもった指揮ぶり、なかなか達者なM
C、そして多様で飽きさせないプログラムで、アマチュアとはいいながら入
場料をとれる芸になっていたと思います。とにかく堅苦しい発表会風でない
ところがよかったですね。林さん、川嶋さん、ご苦労様でした。

*? 新しい経験をさせて頂いたことに感謝の念をこめて挨拶を送る
          野ざらし Nozarashi (dbm51153@pcvan.or.jp) !*

#7314/7314 大ホール ★タイトル (GXH73005) 96/ 7/24 22:20 ( 48) 演奏会>遅ればせながらOMP・カロス合同    怪鳥 ★内容 午前中大雨で人ごとながら気をもみました。天候とお客さんの入り とは大いに関係がありますから・・・ 大変素晴らしい演奏会でした。並べて聴くとOMPとカロスのキャ ラクターの違いがわかります。どこがどう、と分析的に説明するこ とは、私にはできませんが、声やハーモニーの質、表現のスタイル のようなことでしょうか。身内の話で恐縮ですし説明にもならない のですが、カロスは松原と共通点がありそうだし、OMPは湘南市 民コールに似ているように思いました。 1、4声のミサ(バード)   カロスのキャラクターに合っているのでしょう、良い演奏でし   た。ただ、ヨーロッパの合唱団とは歌い方が違うだろう、とい   う感じは持ちました。フランスのフェスティバルでどう評価さ   れるのか興味のあるところです。 2、2つのオーストラリア民謡(信長貴富編曲)   某作曲賞の演奏審査で2年連続、計3曲を歌わせていただいた   信長さんを初めて拝見しました。聴きにきていた松原のメンバー   も「あれが信長さんかあー」と言っていました。   OMPの人たちも仲間の曲を楽しんで歌っている、という感じ   です。かなり凝ったアレンジですね。 3、追分節考(柴田南雄)   シアターピースに積極的にチャレンジしているカロスらしい演   奏で大いに楽しませてもらいました。男声が客席を歩き回りな   がら歌い、ホールの空間が音で埋まるのが面白かったのですが   ステージに残った女声がかき消されて聞こえてきません。計算   したものなら良いのですが・・・   また、女声がドレスで扇を持ち日本風な所作をするのがどうし   ても違和感がありました。意図はあるのだとはおもいますが。 4、カムイの風(三善晃)   三善先生の新作ということでの期待通りのステージでした。こ   の作品に託されたメッセージを十分に伝えてくれる演奏だった   と思います。多少荒削りな面もあったように感じましたが、こ   れからシドニーでの本番に向けてさらに磨きがかかるのでしょ   う。 5、うた(武満徹)   100人以上の合同演奏はどんな具合だろう、と思ったのです   が、声が揃っていて、パートのバランスがきちんとしています   からなんの抵抗感もなく聴くことができました。この曲には大   合唱なりの演奏効果があることを認識しました。   「死んだ男の残したものは」が特に印象的でした。 6、アンコール   「阿波踊り」(三善晃)が抜群に面白かったです。曲ももちろ   良いのですが、客席を沸かせた合唱団の演技力に感心しました 林さん、川嶋さんシドニーでのご活躍を期待しています。
#7318/7318 大ホール ★タイトル (CLASSIC4) 96/ 7/27 9:28 ( 50) 演奏会>カロス・OMPジョイント  96-44    モー ★内容 遅ればせの演奏会報告です。  当日は、台風崩れの熱帯低気圧のおかげで大雨でありました。  会場のチケット預かりのところで「PC-VAN・・・」というと「はいはい」と さっと封筒を出してくれました。受付してくれた人は、後で川嶋さんの 妹さんと判明。  客は、おばさま比率が異様に高く少々懸念を覚えました。  さて、はじめのカロスのバードですが、人数のせいか 少々、大味な印象を受けました。  OMPが出てくる前に、栗山さんがちょこっと挨拶をされていましたが 「(立川で演奏会をするのは)他に会場が取れなかったから、 しょうがなかった」みたいなことを言ったときに、会場のおばさま達が 「んまっ」と少々むっとしていました。  次にOMPが登場。女声陣の衣装が大変結構でございました(^^) 唐澤さんはこれで前列に行ったのかと勝手に納得しておりました。  オーストリア民謡は、東京都合唱祭の時の唐澤さんの鞭撻調の感想を 読んでおりまししたので、どんな風なのか興味深く聴きました。  編曲のせいか、縦の線が揃いにくそうでしたが、響き自体はOMPらしい 涼やかなものでした。表情が楽しげなのも良いですね。(そんなに 悪くないじゃん)と思いましたが、休憩時間に聴いたら、東京都合唱祭から長足の進歩を 遂げたとのこと。さもあろうと思いました。  追分節考は面白かったというか、少々感動すらしてしまいました。 これは間違いなく日本合唱曲の名曲ですね。 (あと10分ぐらい演奏が短ければ、なお良かったと思いますが) こういう曲は、どんどん海外に紹介していって欲しいものです。  怪鳥さんはが書かれている女声については、席が前のほうだった せいか気になりませんでした。  さて、カムイの風は、林さんが紹介(*解説参照)してくれていたお陰で 随分楽しめることができたと思います。ありがとうございました>林さん。  まだ、滑稽さを伝えられるほどモノにはなっていないようでしたが、 機会があれば、もう一度聴かせていただきたいです。(日本で)  武満さんの「うた」は、曲の魅力の20%ぐらいしか表現されて いないようなもどかしさを感じました。まあ、予想通りでしたが。  とは言え、アンコールの小さな空、阿波踊り、ふるさとは いずれも素晴らしく、全体としては高収穫の演奏会で満足することが できました。     モー
#7319/7319 大ホール ★タイトル (CLASSIC1) 96/ 7/27 11:17 (107) 演奏会>OMP・コーロカロス合同演奏会     唐澤 ★内容 ●バード/4声のミサ(カロス)  カロスを聞くことじたいが久しぶりでした。  すでに他の方がカロスとOMPの響きの違いについて書いていらっしゃいます が、確かにこの演奏会ではキャラクターの違いを聞くことが出来て面白かったと 思います。  もっとも互いに全く違う傾向の曲を歌ったので直接の比較は出来ませんが、 バードは、肉厚の響きだなあと思いました。石造りの建物の中の響きではないで すね。  私は前から4列目くらいの席で聞いていたので、ほとんど直接音ばかりという 音響でしたが、こんなに前列で聞いてもこの演奏会はどの曲も綺麗に響いていま した。このくらい技術の高い演奏なら前の方で聞くのも解像度が高くて良いなあ と思いました。 ●2つのオーストラリア民謡(信長貴富編曲)OMP  東京都合唱祭で聞いたときには、「ひえぇ」と思うほど、「練習中」という感 じでしたけれど、今回はさすがにOMPらしい緻密で強靱なハモリを聞かせても らいました。  強靱な響きといっても、それは土台にあるテクニックのことで、「調子を揃えて クリック クリック クリック」はうきうきしてくるような楽しさがありました。 団員の表情も、楽しげで聞いてて嬉しくなってしまった(^^)  この編曲、オーストラリアでは譜面を欲しがられるかも知れませんね。余分に コピーを持っていった方がいいですよ(^^) ●柴田南雄/追分節考(カロス)  おかげさまで柴田作品もたくさん経験させていただいていますが、この曲は初 めてです。  女声はステージ上で、男声は会場いっぱいに広がって演奏しますが、個々の メンバーの力強さに感心しました。  余談ですが、私のすぐ後ろには昔この曲を演奏したことがあるらしい老夫婦が 座っていて聞きながらあれこれ感想を交わしていました。  私の席からだと、女声が大きく、会場に散らばった男声はちょっと物足りない 感じの音量バランスでした。男声の「追分け節」の背景にたなびくように女声が 聞こえるときっと良いバランスなんでしょうね。 ●三善晃/カムイの風 −青ばと物語− (OMP)  今回の私にとっての目玉がこの曲でした。  ひじょうにダイナミックレンジの広い音楽で、曲も演奏も期待を裏切らない物 でした。  演出ものではないのだけれど、演技を感じました。  演奏者の声に浮かんでくる感情表現もとても良かったと思います。  満足しましたが、余力を感じたというか…、まだこれ以上に良い演奏が出来そ うな感じも受けました。  冒頭、弱音の部分から徐々に盛り上がっていく部分の「弱音の緊張感」とか、 フォルテの限界もまだまだ行けそうです。何しろ曲が出来てから一ヶ月ですから、 これからもっと曲になじんでシドニーでは一回り劇性の大きな演奏が聴けること と、楽しみにしています。  OMPは、現代音楽での混沌を歌ってさえ非常に精密な印象を受ける合唱団な のですが、そのテクニックでさらに「土っぽい躍動」を引き出すことに挑戦して いただきたいと思います。 ●武満徹/混声合唱のための うた より(合同)  120人くらいいたでしょうか。  どの曲も比較的オーソドックスな表現だったと思いますが、実に充実していま した。  また、これほどの人数にも関わらず非常に明瞭度の高い演奏で、言葉が大切に されているなぁと感じました。  「死んだ男の…」などはもう、聴いていて熱くなってしまいました。  「さくら」も久しぶりにこんなに美しい音楽を聴いた気持ちで満たされました。  しかし、さくらに関してはまだ行けると思います。会場の前列で聴いていたこ とももちろん影響していますが、空間に溶けて広がっていくような淡い響きを、 まだまだ追求できるのではないか、この曲は。  それには、この曲に限り「日本の言葉を伴った西洋の音楽」だとでも言うよう な感覚でアプローチしても良いのではないかと思います。  ピッチの精度なんかは十分に良いと思うので、あとは和音の構成音の間の音量 バランスとかですかねえ…良くわかりませんが。  おそらくとても微妙なものなのでありましょう。 ●アンコール ・武満徹/小さな空   団員の方の楽しげな表情が印象的でした。とくにアルトのお二方(笑)   あと、OMPの団内指揮者の方が思わず手を振り回しながら歌っている光景  も面白かったなあ(^^) ・三善晃/阿波踊り   でたな!って感じ。大好きです(^^)   注文を付けるとすれば、男声の口三味線にもっと爆発してもらいたかった。   ばんばんツバをとばして下さい(笑)   踊りもなかなか入ってました(^^) ・信長貴富(編)/ふるさと  一番の歌詞をまるまる斉唱にするなんて、編曲者としてなかなか出来ないこと です。普通ならハモらせずにいられない(^^; でも、すごく効いていました。  なんか難しい曲でしたが、面白いですね。 ----*----  全体を振り返れば、実に楽しく満足感の得られる演奏会でした。とにかく楽し い感じ満載でしたね。  アンコール&自称おまけが沢山あったのは、遠征先でもこのようにサービスす るのでしょうね。  曲もヨーロッパーの伝統的な音楽から、フォークソング、シアターピース、 三善さんの新作初演、武満の歌などなど、一つの演奏会とは言えないほどの幅広 さだったし。  定期演奏会とは違ってこういう楽に聞ける演奏会も本当に良いものだと思いま した。OMP、カロスの皆さんの海外での成果を楽しみにしています。 唐澤

参考:カムイの風について、お客様のための解説(林瑞絵)
 まず、題材はアイヌ民話です。最近マイノリティを取り上げるのが一種流行の ようになっていますが、三善先生はずっと前からぜひやってみたいと思っていた そうです。
「青鳩物語」と題された内容は、アイヌの世界観・宗教観に深く関わっていま す。
 かいつまんで説明すると、アイヌが狩りをして動物を食べることはすなわち、 動物に姿を変えた神をもてなすことだというのです。狩りをするときは身を清め 正装をして、畏敬の念をもって矢をつがえます。そして獲物は感謝をもって肉を 食い毛皮を使い、その亡きがらは丁重な儀式と共に葬ります。そうすると 宿っていた神は再生し、再び動物の形をとって人間の世界に来られるというの です。
 葬られるときの捧げ物が立派であるほど、神の格も上がりますが、いい加減な ものでまつられると再生できなくなります。この物語の主人公である神も、 「ちゃんと木のイナウ(祭具)でお送りしますよ」というアイヌの言葉を無視して 本州まで飛んでいき、和人に紙製の幣でまつられたために死骸が腐り悪習を放ち、 やっと再生したものの小さな青鳩になってしまった、という話です。人間と共存 しての神という発想が面白いと思います。

 この物語を、アイヌの老女(故人)が歌い語っているのをテープから起こして 合唱曲に仕立てられています。もとに一部鳩笛が使われているのですが、それも 人間の声で表現しています。
 例によって4分の3.5拍子とか出てきてピアノの和音も三善三善していますが、 やはり西洋音楽とは違った響きで大変面白い曲になりそうです(曲はもう完成した のですが演奏がまだ全然(^^;)。栗山先生はこういう曲がお好きなので「血が騒ぐ」 と言って喜んでいます。

 7/17(水)の練習には三善先生をお招きして、いろいろとご指導をいただきまし た。そのときの話など。

 上で私は「青鳩物語」について、アイヌの世界観に深く関わっていると書き ましたが、だからといってこの「カムイの風」という曲は壮大な叙事詩というわけ ではありません。時間にして8分ほどの短い曲ですし、内容はかつては大きな鳥、 今は人間の言うことを聞かなかったために小さな青鳩になってしまった神がぽつぽつ と語るやや愚痴っぽい身の上話です。

 それにどんな曲が付いたかというと。

 よく昔の物語で、本人は真剣なんだけどどこか滑稽なものってありますよね。 お祭りの仮面なんかでも、悪魔を追い払うために怖い顔をしているはずなのに どこかユーモラスなものとか。ああいう感じとでも言いますか、民俗的な踊りを 思わせるリズムが多用されたり、夜に森の中で突然ギャーギャー鳴いて飛び立つ 鳥のような声を女声に出させたり、言葉のリズムに合った変拍子と同時進行に語り を入れたり、面白い曲です。そう、作曲者から演奏に関しての希望がそれでした。

 例によって駄洒落を連発しながら練習する(でも初めはめちゃくちゃ緊張していた) 栗山先生を、三善先生は笑いながらご覧になっていましたが、「私の言いたかった ことは栗山さんが仰ってくださいました。とにかく、面白くやっていただきたい」 ということでした。
 そして自ら、アイヌが鳥を仕留め損ねて悪態をつく様子などを模範演技(?)して くださいました。本当に、あんな細い体のどこからあんなパワーが出てくるのだろう と、いつも思います。



柏市民合唱の集い〜OMP記念招聘演奏・感想


日時:1996.7.7
場所:柏市民会館大ホール
曲目:柴田南雄/宇宙について

 PC-VAN SIG『クラシックコンサートホール』より転載&編集


#7253/7253 大ホール
★タイトル (PSA13887)  96/ 7/ 9   6:38  ( 46)
演奏会>柏のOMP                              FUKUZO
★内容
  …前略…

さすが日本一合唱団と言われるだけあって、全体のバランスが素晴らしいです。
一人一人の声もいいですね。

ちなみに、松原の時にモーさんが仰っていた声の出方が = 形というのが何となく
分かったような気がしました。

演出は、前回とほぼ同じ。スモークもたかれたし。
会場は人見より狭かった関係で、各民族のディテールが
よく見えました。ビル族は相変わらず元気に踊っていました。

おらっしゃのところでは、通路で交通渋滞が起きていたような・・。
唐澤さんと隣で聴いていたのですが、林さんがやってきて
おらっしゃのサービスしてくれました。川嶋さんも近いところで
唱えていらっしゃいましたね。

他に気づいた事と言えば(演奏内容とはちょっと違いますが)
おらっしゃの部分、前回は皆さんがもっとじっくり歩き回っていた
ように思えます。だいぶ早くグループフォーメーションに移行しませんでしたか?
それとも私の気のせいでしょうか。

もう一点、前回に比べて人数が少なくなっていませんでしたか?
これも気のせいかも知れませんが。

聴衆の反応ですが、「こいつぁまいった」という方々が多かったと思います。
「夢に出そうだ」という言葉も聞こえてきました。
団員の方々がステージに降りてくると「これはあーだこーだ」と話を始める
ご年輩の方々も多かったです。二つ隣のオバハンは、ビニールの傘袋を演奏中に
くしゃくしゃいじっていました。唐澤さんと私で止めたのですが、
何故自分が怒られているのか理解できていない様子でした。
たとえ理解できなくとも、芸術作品なのですから敬意を払って静かに聴くという
態度が欲しいですね。

ひとまずこんなところで。

シドニーでの名演を期待します。

                        FUKUZO

#7262/7262 大ホール ★タイトル (CLASSIC1) 96/ 7/11 0:17 (146) 演奏会>柏市民合唱の集い〜OMP記念招聘演奏  唐澤 ★内容  柏市民による『合唱の集い』という催しが今回で15回ということで、これを 記念して合唱団OMPが招聘されたということです。  出演団体はOMPを入れて19団体でした。  私はのんびり出かけて、さっさと帰ってきてしまったので、10〜13の4団体だ け聴きました。   …中略… 13.合唱団OMP「招聘演奏」     宇宙について(柴田南雄)  この曲の前に休憩時間があって、「一階席で聞くと演奏効果があります」 というようなことを言っていました。定期演奏会の時のアンケートで「こういう ことと教えてくれれば一階で聞いたのに」などという意見があったのにさっそく 対応したのですね。  もっとも、それでも2階に座るお客さんはいましたが、曲が始まると手すりの 所まで出てきて下をのぞき込んでいる人が多数いました。(ちなみに、客席は奥 行きが比較的浅くて、2,3階席まであるという作りでした)  定期演奏会では、ほとんどが真っ黒な服を着ていて、数人だけ模様のある衣装 でしたが、今回は女性の衣装は、黒が基本ですがモノトーン系の模様のある衣装 を着ている人が増えました。このほうが、なんとなく「色々な人(民族)が居る」 という感じが強調されるような印象を受けました。  音楽の方は、人数は定期演奏会よりも10人以上少ないようでしたが、会場が小 さめだったので、密度感はかえって増したような感じがしました。通路も狭いの で、動き回る曲では所々で交通渋滞が起きていたのは愛嬌でしょうか(^^)  密度感は会場の広さと人数の問題かも知れませんが、定期演奏会からさらに練 習が深まったのか、滑らかさを感じたというか、曲が板に付いてきたような感じ もしました。  聞く側が全体像を分かって聞いているという事もあるのかも知れませんが、 この曲は50分あるそうですが、30分もかかったような感じがしない、「あっ」 というまのスピード感があったと思います。不思議ですね。  諸民族の歌で、川嶋さ んの居た「セレール族」は、今回はかなり目立っていました。というのは、定期 演奏会ではステージ端に腰掛けて軽くペタペタと床を叩いていたのに比べて今回 は力一杯バンバンと音を立てて叩いていたからですね。 (しかし、アザを作らない程度にしておいた方がよろしいかと思います(^^;)  諸民族のところは、衣装を変えた人も居て、林さんは黒の上着を取って柄付 きのTシャツかなにかで踊り狂っていました。しかし、前回の人間パーカッショ ンの人がお休みでちょっとパワーにかけたのは残念でした(^^;  全体には、この部分は複数民族の違いがより感じられ、華やかな感じが増した のがなかなかいいと思いました。  演出では、最後に歌いながら全員出ていってしまうというのが効果的だと思い ました。  注文を付けたい部分としては、滑らかになった分、荒々しさ、怖さが足りなか ったかも知れないと思われた事です。西洋音楽ではない部分の発声も工夫の余地 があるかと思います。  客席の反応が気になって、団員が手加減してしまったということも無かったで しょうか?  何しろ会場はママさんコーラスの関係者を中心とした、おばさま〜おばあさま が大半で、髪に白いものの目立つ人も相当居るという平均年齢の高さ。通常の OMPの演奏会の客層とはあまりにも違います。  私の周りのお客さんも面白そうに聴いている人もいれば、「来年もこういうの やるなら私もう来ない」とかいってびびりまくっている人もいました。他にどん な感想を持った人が居たのか分かりませんが、演奏中ずっとかなりざわざわして いて落ち着かない雰囲気でした。  こういう雰囲気の中ではやはり、気の弱い団員は手加減してしまったのではな いかなあと思うのです。もっともOMPの気の弱い団員が居るのかどうか知りま せんが(笑)  シドニーのお客さんはきっと、変わったものが聞ければ大喜びするというよう な人ばかりだと思うので、心おきなく取り付かれたような演奏が出来るのではな いかと想像しますが(^^)   …後略… 唐澤


第15回合唱団『弥彦』〜夜と谺(こだま)


日時:1996年 8月25日(日)18:30開演
場所:弥彦総合文化会館大ホール(新潟県弥彦村)
曲目:三善晃作品集     女声合唱 爪紅/悲しみは/空を走っているのは/ラ・メール     男声合唱 一人は賑やか/路標の歌     混声合唱 雪の窓辺で/待ちぼうけ/カチューシャの唄/佐渡おけさ    対談<宗左近、三善晃>     委嘱作品について    委嘱初演     夜と谺(宗左近詩・三善晃曲)    唱歌の四季     朧月夜/茶摘/紅葉/雪/夕焼小焼
 PC-VAN SIG『クラシックコンサートホール』より転載&編集

#7393/7393 大ホール
★タイトル (CLASSIC1)  96/ 8/26  21:31  (115)
演奏会>第15回合唱団『弥彦』〜夜と谺(こだま)    唐澤
★内容
 新幹線で燕三条まで約二時間。そこから超ローカル・弥彦線で…と思ったので
すが、あまりの本数の少なさにタクシーを使ってしまいました。(3660円)
 弥彦総合文化会館大ホールは、山の中です。向かいの山の斜面にはロープウェ
イがあり、山の頂上からは佐渡島が見えるそうです。
 当地は温泉地であり、文化会館の向かいには競輪場がある他はなんにもない。
 合宿講習会にはまことに適した場所といえましょう。(歓楽街が後ろに控えて
いたら午前中の練習が出来んじゃろう(笑))

 ホールに着くと、聴きに来た(今回は出演しない)合唱団OMPのメンバーが
三々五々集まってきていました。ホールをのぞいてみると、最後の練習中。(予
定時間を大幅に過ぎて開演ぎりぎりまで練習していました)

 こんかい弥彦に集まったメンバーは過去最大で、200人になったそうです。
 舞台からこぼれんばかりでした。

                                  ----*----

 今回の曲はすべて三善晃作、編曲だそうです。

●女声合唱 爪紅/悲しみは/空を走っているのは/ラ・メール

 なんだかとても穏やかな演奏でした。
 普段激しい合唱曲ばかり聞いているので、異質な感じ。女声合唱もなかなか聴
かないですし。

●男声合唱 路標の歌/一人は賑やか

 「女声合唱が静かだったので男声合唱はにぎやかに行きたいと思います。」
 と指揮者のMC
 一人はにぎやかは、男声合唱版は初編曲だそうです。今回の編成ではトップテ
ナーが少ないということで、バランスが難しかったようですが、今後もどんどん
歌われていって欲しい曲であると思いました。なかなか良い曲/編曲です。

●混声合唱 雪の窓辺で/待ちぼうけ/カチューシャの唄/佐渡おけさ

 待ちぼうけは、曲の中でじゃんじゃん転調してめまぐるしくとても面白い編曲
でした。この曲は今後色々なところで流行ると面白いな。
 佐渡おけさは、もう一つ盆踊り風の楽しい感じが欲しかったと思います。同じ
三善先生の阿波踊りは爆発的なパワーを感じるのですが、ああいうのを期待して
いました。
 演奏でもっとよくなるか…全体的にゆっくりのテンポではありますが、その中
でのキレがあると良いんじゃないでしょうか。
 太鼓が入りましたが、団員の中から急遽指名を受けての演奏らしく、もうひと
がんばりノリを作って欲しかったです。あと、伴奏は、ピアノと鈴もはいり、
面白い曲だと思います。

●対談<宗左近、三善晃> 委嘱作品について

 … 休憩 …

●夜と谺(宗左近詩・三善晃曲)
 詩集は「藤の花」と言います。詩人の宗左近氏が子供の頃、北九州の実家に父
の丹精した藤の花があったそうです。
 花の印象を頼りに書かれたこの一行詩集から、氏が25歳ぐらいの時、東京大空
襲、B29の落とした焼夷弾のなかを母とともに逃げまどった経験を、詠った作品
の中から取って、三善晃が作曲した物です。

 三善氏は美しく、厳しく激しい曲を書きました。
 冒頭の
 「夜が真昼 鳴き声たちの火の飛沫」
 という、記憶のなかの情景にズームアップしていくような緩やかだがシンとす
る響き。そして、眼前いっぱいに立ちふさがる激しい「火の飛沫」

 一行詩は、次々と燃える詩の情景を詠います。

 そして、クライマックスに向かって、飽和していく音響、響きと叩くような
リズム、叫び。

 「火をつけられなくて闇 つけられて闇 殺さなくて闇 殺して闇」
 「炙られて火 炙られなくて火 目をあけて火 目を閉じて火」
 「空燃える 地より天への大瀑布」

 そして、視線はロングに退いていくのだけれど、もはやどこまで退いても視界
いっぱいの炎。
 そして記憶はいっぱいの炎のなかで途切れ、最後に静かに鎮魂の祈りのように
響いて曲を閉じます。
 「曼珠沙華八十八万本 狂い咲きした夜でした」

  …

 たった三日で曲を仕上げなければならないという制約のなかで、弥彦合唱団は
本当に良くこの曲を演奏したと思います。ぜひとも近いうちに、またじっくりと
練り上げて再演されるように期待いたします。

●唱歌の四季
    朧月夜/茶摘/紅葉/雪/夕焼小焼

 最後は和やかに楽しく歌って終わりましょう。という感じですね。
 三善先生の編曲は面白いです。

 最後の「夕焼小焼」は、歌いながら客席に降りていき客席を取り囲むといった
演出。アンコールには客席と一緒にもう一度「夕焼小焼」という具合でした。
 大層受けていました。私の隣のおばさんも歌っていた。

唐澤

唐澤清彦 NKE44364@pcvan.or.jp(k-kara@cap.bekkoame.or.jp)