東京カンタート'96演奏会


■#7058 大ホール 96/ 5/15 (ID:NKE44364@biglobe.ne.jp)
演奏会>東京カンタート'96演奏会         からから!
 
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 東京カンタート'96演奏会
       1996.5.14(火)19:00 於:なかのZERO大ホール
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 演奏曲目
 
 <ジョージ・ゲスト指揮>
 コーロ・カロス
     バード/4声のミサ曲
 
 <マッティ・ヒュエッキ指揮>
 Tokyo Cantat'96男声合唱団
     マデトーヤ/深き淵より
     シベリウス/賛歌
     シベリウス/船旅
     クーラ/夕べの情趣
 
 <ジョージ・ゲスト指揮>
 合唱団OMP
     ハウェルズ/レクイエム
 
 <マッティ・ヒュエッキ指揮>
 大久保混声合唱団
     エングルンド/告別の賛歌
     ヨハンソン/アクルカールの墓
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 「東京カンタート'96演奏会」は、ジョージ・ゲスト、マッティ・ヒュエッキ
という合唱界の大先生(らしいですね(物知らず(^^;))を招いて一週間にわたって
公開レッスンや講演を行うというイベントの成果発表的なコンサート。
 上記の先生方の指導を得た合唱団がその成果を披露しました。
 
 ちなみに東京カンタートのホームページ
 ( http://www.bekkoame.or.jp/~nobutasa/cantat.htm )によれば、各先生の略
歴は次の通り
 
●ジョージ・ゲスト/George Guest
1924年イギリス北ウェールズ生まれ。1947年ケンブリッジ大学セントジョ
ンズカレッジのオルガン・スカラーに選ばれ、1951年オルガニストとなる。
1956年同カレッジのフェロー、及びケンブリッジ大学音楽講師に任命される。
1951年より1991年まで同カレッジ合唱隊音楽監督を務める。
 
●マッティ・ヒュエッキ/Matti Hyokki
1946年生まれ。9歳よりヘルシンキのシベリウス音楽院で学ぶ。1971年
同音楽院のオルガン奏者と音楽教師の課程を終了。1982年同音楽院合唱指揮
科の主任講師に就任。ヘルシンキ大学男声合唱団を始め、男声、混声、少年少女
合唱団の指揮者を務める。フィンランド国立オペラでも合唱指揮を担当。
 
                                ----*----
 
 私(とモーさん)は、OMP団員の究生さんにさそわれて聴きに行きました。
 入り口で久しぶりに、栗山先生を見かけました。
 3月12日の「青い鳥」の演奏会では歩くにも気力を振り絞ってという様子だっ
た栗山先生も、ずいぶん回復なさったようで、他の来場者と歓談なさっている
ところは元気そうに見えました。これなら、6月のOMP定期演奏会や、8月の世
界合唱シンポジウム(シドニー)も無事に行って来られそうだなと思いました。
 
 会場に入ってみると、約1300席の客席には結構空席がありました。半分くらい
か? 平日の演奏会ということもありますが、参加各団体の単独コンサートでも
もっとお客さんが居るので、宣伝の問題なのかもしれません。
 もっとも、客層も普段のコンサートとは違うようでした(身内率が高い感じが
しました)
 
 では、演奏について…
 
●ジョージ・ゲスト指揮
 コーロ・カロス
     バード/4声のミサ曲
 
 このホール(なかのZERO)は初めて来たのですが、約2.5秒だとかいう
長〜い残響に驚きました。よく言えば教会風、悪く言えばお風呂場風(^^)
 歌う人には、慣れない音響とはいえ自分たちの声がよく帰ってくるので歌いや
すかったのではないでしょうか? バードのミサ曲にはぴったりの音響だったと
思います。
 演奏は綺麗な和音が響いて美しかったと思います。
 ただ、たとえば「キリエ」の「キ」などの子音が刺さるように聞こえて耳障り
が悪い音がしていたのがとても気になりましたが、究生さんから聴いたところで
は、レッスンでは子音を明瞭に発音することを要求されていたようですね。
 「日本人の音響感覚とは違うのかなあ?」という疑問が沸きます。
 指揮者の「このくらい子音を出して良いんだ」という意図通りなのでしょうけ
れど、でもイギリスの合唱団の演奏でこんなに子音が気になる演奏があっただろ
うか…? 謎を残した演奏でした。
 
●マッティ・ヒュエッキ指揮
 Tokyo Cantat'96男声合唱団
     マデトーヤ/深き淵より
     シベリウス/賛歌
     シベリウス/船旅
     クーラ/夕べの情趣
 
 会場隅に演奏順序入れ替えの看板が立っていたのですが、控えてこなかったの
で、どれがどの曲だったかいまひとつ自信なし(^^;
 北欧の合唱界にはクラシックがない…ということで日本と近い。なんて話しが
トークタイムに有りました。
 今回演奏された曲はどれも美しく、技巧的に興味深い曲もあり楽しめました。
 男声合唱のレパートリーとして、これからもっと歌われても良いのではないか
と思います。
 
 ヒュエッキ先生の指揮は、見ていて面食らってしまいました。
 アクセントの来る拍を「がしがし」というか「ぶるんぶるん」というか、とに
かく力一杯二重に振るのです。パントマイムのロボットみたいな感じといっても
いいかな。
 客席から見た感想では「歌いにくそう」と感じたのですが合唱団は歌っていま
したね。団員の方々の感想も聞いてみたいと思いました。
 
 演奏の方は、この催しのために集まった合唱団ということで、前の演目に比べ
たら緻密さにかけるところがあったかとは思いますが、大変楽しく聴きました。
 
●ジョージ・ゲスト指揮
 合唱団OMP
     ハウェルズ/レクイエム
 
 CLAの究生さん、ココさんが乗って、我々の本日の主目的の曲(^^)
 ハウェルズのレクイエムは、6/2のOMPの定期演奏会の演目にもなるそうです。
 近代の曲ですが、静かな悲しみを二群の合唱が美しい響きで歌います。
 私は贔屓と言うことなく(笑)、この曲が一番密度の濃いなめらかな響きを聴か
せてくれたと思います。子音の強調の問題はこの曲ではあまり気にならなかった
のですが、最初の曲と同じ指揮者の指導なので、子音の強調のことは同じように
言われて居るんだろうと思います。それで、きついと感じなかったのは同じ子音
でも音色の違いとか色々あるのだろうか?などと思っています。
 いつもOMPが現代音楽を演奏するときの「ソリッドな不協和音」という印象
が、子音の音色にも波及して、同じ「シュッ」とか「キッ」とかいうのでも、
芯のある、フォーカスの決まった音がするんじゃないかという感じがしました。
 
 曲はソプラノ、アルト、テノール、バスのソロを交えて進むのですが、この
ソロを担当した団員の方々の響きがまた美しいこと…。
 例によって、このホールの響きの助けもあるでしょうが(カラオケのエコーと
同じですものね(^^))、響きの純度が実に高い。
 これはとてもアマチュア合唱団の団員の声とは思えないような声で、私も時々
歌いますが、普段「みんなで歌えば恐くない」なんて姿勢の私はただ恐れ入るば
かり(笑)
 今回特に感心したのはベースの杉野さんのソロで、テノールのような澄んだ声
でベースを歌うんですね。逆の「とどろく低音」というのも好きなんだれど、
これは貴重な存在だなあと思いました。
 
 終演後ロビーで会ったココさんと究生さんが「思ったほど切れなかったね…」
なんて言っていましたが、良いのではないでしょうか? 実に透明な響きのする
演奏でした。
 
●マッティ・ヒュエッキ指揮
 大久保混声合唱団
     エングルンド/告別の賛歌
     ヨハンソン/アクルカールの墓
 
 これは、聞いた瞬間に、コーロ・カロスやOMPが得意な分野の曲だと思い
ました。要するに1960-70年代の曲なのですが、セリフ、無声音、叫びなどがふ
んだんに入った現代音楽です。そんなにハードではないですが。
 一昨年に聞いた八村義夫の「愛の園」のような音も随所にありましたが、こう
いうのが時代の音だったんですかねえ…
 
 なにせ私はOMPのファンなもので、頭の中で「OMPの演奏ならここはこう
いう響きがするんだろうなぁ」などと考えながら聞いていました。
 
                               ----*----
 
 振り返ってみれば、実に期待以上の満足感を得た演奏会でした。
 もっとお客さんが多ければよかったのに…と思ってしまいました(^^;
 
からから!
 
■#7061 大ホール 96/ 5/17 (ID:AHB19527@biglobe.ne.jp)
Re#7058>東京カンタートと子音の音色        Nori
 
 なかのZEROも行ったことないんですよねー。
 
> このホール(なかのZERO)は初めて来たのですが、約2.5秒だとかいう
>長〜い残響に驚きました。よく言えば教会風、悪く言えばお風呂場風(^^)
> 歌う人には、慣れない音響とはいえ自分たちの声がよく帰ってくるので歌いや
>すかったのではないでしょうか?
                           (からからさん)
 
 1月 20 日に東京カントライで使った きゅりあん 大ホールは,客の入った
客席の音響のことはよくわかりませんが,ステージ上では自分たちの声がほと
んど聞こえないという困ったホールで,おかげで団員は必要以上に声を出した
傾向がありました。なかのZEROのステージ上はどうだったんでしょうね。
 
> ただ、たとえば「キリエ」の「キ」などの子音が刺さるように聞こえて耳障り
>が悪い音がしていたのがとても気になりましたが、究生さんから聴いたところで
>は、レッスンでは子音を明瞭に発音することを要求されていたようですね。
> 「日本人の音響感覚とは違うのかなあ?」という疑問が沸きます。
> 指揮者の「このくらい子音を出して良いんだ」という意図通りなのでしょうけ
>れど、でもイギリスの合唱団の演奏でこんなに子音が気になる演奏があっただろ
>うか…? 謎を残した演奏でした。
 
 それは,英国人とコーロ・カロスの日本人の [k] その他の発音がかなり異な
っていたためかも知れません。発音記号は言語間の微妙な差を表現しませんか
ら字で説明できませんが,[t] を例に取ると,ドイツ語では舌がよく立って破
裂音の音色が際だちますが,英語では舌がやや寝てきて摩擦音を含み,フラン
ス語ではさらに寝てしまうので(英語のスペルだと)ch の音にかなり近づきま
す。もちろん native でも個人差はあります(私はジュリー・ドレフュスのフ
ランス語はあまりフランス語の音らしくないと感じる)が,傾向としてはこの
ような違いがあります。フランス語の [k] は英語の [k] ではありません。そ
のようなことが日本語との間でも言えるはずです。
 歌の場合はもちろん通常の発音と違いますが,[k] では子音に続く息の流れ
で発生する硬口蓋との摩擦音の多少が「気になる子音/気にならない子音」の
分かれ目かも知れないと想像します。私はドイツ語やイタリア語の歌で英語の
[ti] を出されるとすごく気になるんですよ。それは口の中のほんの些細なフォ
ームの違いで生じるあの摩擦音によるものなんです。
 
>せてくれたと思います。子音の強調の問題はこの曲ではあまり気にならなかった
>のですが、最初の曲と同じ指揮者の指導なので、子音の強調のことは同じように
>言われて居るんだろうと思います。それで、きついと感じなかったのは同じ子音
>でも音色の違いとか色々あるのだろうか?などと思っています。
 
 団の練習などにもよるのでしょうが,私は基本的には個人の言語感覚による
ものだと思っています。コーロ・カロス団員にはコーロ・カロスの,OMP団
員にはOMPの言語感覚が出来上がっているんでしょう。
 
 
                 Nori
 
■#7063 大ホール 96/ 5/18 (ID:MWM06676@biglobe.ne.jp)
演奏会>東京カンタート  96-23        モー
 
 演目などの詳細は#7058にからから!さんが書かれているので省略します。
 
 まず、コーロ・カロスのバード。
 子音の発音が大げさでちょっと耳障り。また、それらがうまく
揃わず、苦戦していたと思います。
 今、タリス・スコラーズのCDを聴いていますが、そんなに
子音は聞こえません。
 しかし、あれだけの大人数でバードを歌って気持ちの悪い音に
ならないんだから、さすが世界一の合唱団か?
 
 男声合唱団
 シベリウスでは「北欧の風」を感じることが出来るかと期待して
いたのですが、そこまでには至りませんでした。
 
 OMP
 まず、曲が素晴らしいですね。「キレなかった」というけど
これまで聴いた2回の定期演奏会の演奏から予想していた以上の演奏でした。
強い集中力と鋭い切れ味、それにうたごころを感じました。
(究生さんとココさんがいるので、評価5割増しぐらいですが(笑))
 
 大久保合唱団
 音色が艶やかで奥深く、栗友会とはまた別の世界を作っていました。
声に金属光沢を感じてしまった。でも曲が難しそう。特に女声パートが
消化不良のような気がしました。
 
    モー