日下奈朋子

5月15日(火)

 あと1泊。

 ゆうべ...というか今朝早くあたりまで呑んでいて、まったりとした状態のままチェックアウト。

 今日はエクス・アン・プロバンスに移動したのち観光(フリー)である。いったんホテルに入り、トランクと手荷物を預ける。今夜のホテルは三ツ星らしい。すげ〜。なんか分不相応(^^;;。っていうか、ほとんど滞在しないのにもったいない(←貧乏性)。

 身支度を整え、再びバスで市中へ。そこで一時解散。街はおりしも12時の食事時。表通りはどの店も大混雑なので、わざわざ避けて裏通りに入る。方針がはっきりしていない者同志がなんとなくつるんで歩いているので、必然的に目的地がなかなか決まらない。ひと通り歩き回ったところで、もういいからどこかに入っちゃおうと、一軒のわりとすいている店に入る。現地の皆さんは外のテーブルに座っているけれど、脆弱な日本人の私たちは「もう日なたはいいよ〜」という気分になっており、比較的涼しい店内へ。が、どういう仕組みか知らないが、ここの店員さんはなんだか、外に座っている客を優先して注文を取りに行く。(単に外国人をなめていたのか)

 30分以上も相手にしてもらえないまま放置され、さすがに温厚な私たちも苛立ち始めてきた。お腹すいてるし...もとい、喉乾いてたし(^^;;。よく見ると、ここは料理を作る人が1人と注文を取る人が1人しかいない。それにしたって、飲み物の注文くらい聞いてくれ〜。 あんまりなので「時間がないので出ます」という意志表示をしても「まぁ待て」と止められる。数人が立ち上がって強硬手段に訴えようとしたら、ようやく注文を聞きにきた。が、そのあとも一向に注文の品は出る気配なし。ビールすら出てこない。これだけ待たされても我慢するしかないのは、ひとえにそういう意志表示をするだけの語学力がないからで(^^;;。やはり勉強は必要です。これだけ待ってれば私たち、これから大塚の甘○郎でも怒らなくなるかもね... 、と言って苦笑(これは注文をとりにくるのがとても遅い居酒屋)。

 が、立ち上がって出ようとまでした時に「2時までしかいられない」と言ってあったのが功を奏してか、やがて集中してどかどか皿が登場。やれば出来るじゃないか(笑)。ところで、ここは一皿がそれなりに立派なお値段だったので、用心してみんなひと皿ずつしか頼まなかった(時間かかりそうだったせいもあるけど)。サラダは値段が安いわりには結構な盛りの良さだったし、メインディッシュっぽい物を頼むと、メインだけでなくてサイドメニューも充実してて、1人前には充分な量だった。が。私が注文したサーモンのカルパッチョだけは、本当にサーモンのカルパッチョしか皿に乗ってないのよっっっ(まぁそれが当たり前なんだが)。サーモンは紙のように薄く皿に貼りついており、あっと言う間に食べ終わって呆然としていたら、隣に座っていたMリンが見かねて自分のサラダのシーフードをお裾分けしてくれるのでした(命の恩人)。...せめてカルパッチョじゃなくてタルタルにしておけばもっと盛りがよかったのに(よそのテーブルの皿を盗み見たらそうだった)とか思っても後の祭り。結局、超ヘルシーメニューだけで席を立つ。

 さて、これといって目的がない人が大多数ではあるが、中には真面目にガイドブックを見ている人もいて、近くにある大聖堂へ行こうと言う。なんでもいいやと思ってついていくと、街中の普通の建物の一角に、突然古式豊かな大聖堂があらわれてびっくりする。中には出入り自由。他にも観光客がたくさんいる。ここサン・ソヴール大聖堂も、やはり今まで見てきた教会と一緒で、お供え物のろうそくがMetta Sutta状態。ステンドグラスの精緻な美しさもどこで見ても感動。高い天井近くの大きな窓からステンドグラスごしに入ってくる光は、まさに色彩が降ってくるという感じ。いいなぁステンドグラス。...が、正面の祭壇にある妙に現代風の金色のオブジェはどうも頂けない。はっきり言って、ただの錦糸町駅前(北口)である。これはどうやら最近になって作られたものらしかったけど。なんのためにあるんだ。謎。

 やがて外に出たがもちろん目的はない。とにかく日なたは溶けそうに暑い。トランクに入ったまま未着用のフリースが恨めしい。街角で売っているぐるぐる回るマシンに入っているどろどろ(シェイクみたいなやつ)が買いたいと1人で騒いで皆の失笑を買う。トイレに行きたくなったので、カフェで休憩。ここのトイレには便座がなかった。海外に来て1番感じるのは、日本のトイレの充実ぶりかも知れないな。もっと都会だったらまた違うんだろうか。

 数人でぼ〜っと休憩していると、元気な一群が、すぐ近くだというセザンヌのアトリエに向かって出発したという。なんでもこの街はセザンヌの生まれた街なのだそうで(勉強不足)。くどいようだが特に目的はないし、ここで群から離れるのも不安(^^;;だったので、とりたててそこを見たいという欲求はなかったものの、なんとなく後を追う。確かに地図上ではとても近そうに見えたその場所は、だらだらの長い坂道を果てしなく登って行くというまるで人生のような(おい)道のり。しかも日なた。かなり体力を消耗してやっと辿り着くと、そこは日本人観光客の嵐(^^;;。団体さんたちが行列していて15分待ちという噂。先に来ていたらしい知っている人たち数人と再会。そこで聞くところによると、そんなに無理してまで見ることもないか、という結論に達したのが私を含む、特に目的がない中でもひときわやる気が薄い3人(^^;;;。で、結局何も見ずにそのまま撤退。帰りは下りなので早いこと早いこと。

 とにかく暑いので日陰と下りの坂道ばかりを選んで進んでいたら、今日の18時半に再集合する予定の広場に着いてしまう(しかも予想外)。新たな気持ちで1から出直すことにし、お昼に解散後歩いた道を再び歩く。センチュ○ー21があったので、いくらくらいが相場なのかのぞいてみる。が、そもそも読めないので賃貸なのか買取なのかもわからず意味なし。ところで、この時点で私には大いなる目標が出来ていた。それは、さっき見たあのぐるぐるマシンの冷たい物が欲しいということ(笑)。だって暑いし、疲れたから甘いもんが欲しいのよっっっ。でも、いざ買おうとすると今度はなかなか売ってる店に出会えない。そういうもんだよ人生ってやつは(大袈裟)。同行の男性2人は文句も言わずにつきあってくれている。ようやく宿願のぐるぐるに遭遇。暑さにうだった体に氷は冷たくて最高〜。

 その後はおみやげ探しにうろうろする。途中、単独行動していたらしい身内の若者(男)が合流し、いつしか私は男性3人を引き連れて歩くことに(^^;;。ところで、この地方は何故かセミ(昆虫のね)関連グッズが数多く売られており、どこのおみやげ屋さんに行っても、セミの壁掛け、セミのろうそく、セミ石鹸、セミのキーホルダー、セミ柄の布製品...等セミだらけ。魔除けだか幸運を呼ぶだかという噂だが、日本人の感覚で言うと、どうもちょっと異様。あんまりどこへ行ってもセミ尽くしなので、最初はずっと避けて通ってきたがやがて「ここまで来たらセミグッズを買わずには帰れない」のような観念に捕らわれ始める(←間違い)。とうとう私たちもみんな、手に手にセミ製品をつかんで、先を争うようにレジに向かってしまうのであった。

 いい加減疲れたしおみやげのセミも買ったし(^^;;、あとは休憩だ。というわけで、4人でバーに入る。まったく、チャンスを伺っては呑んでいるのは、日本にいる時と同じ。そういえば同行のT氏は「街中にビールの自販機がないとはけしからん」とか怒っていたが、そういう問題か? ビールを呑みながら外の広場を見ていたら、向こう側の壁の前に石膏像が立っている。が、しばらく見ているとポーズが変わっている。...そう、もちろんこれは人間で、そういう芸をする芸人さんなのだ。いかにもフランスな感じ。だが、同行のK氏はもちろん気づかず「あの石膏像、3分に1回くらい動くよ」...そういう仕掛けの良くできた像だと思ったらしい。...ま、いいけど別に。芸人さんのお仕事は18時までらしく、鐘の音と同時に人間に戻って、その場で着替え始めていた(笑)。

 やがて時間なので集合場所へ。今夜は最後の夜なので、全員で打ち上げをすることになっていて、ちゃんとしたお店が予約してあるそうで。18時半に広場に到着すると、私たちが最後ですでにみんな揃っている。海外だと驚くべき正確さ。国内とは大違い。...どうも添乗員さんも「時間に集まるはずはないと思って」いたそうで、店の予約は19時らしい(信用ないのね〜)。今回のツアーにマネージャーとして同行してくれた他団のY氏が頭を丸めて登場し、一同を呆然とさせている。その場にいても仕方ないのでぞろぞろ歩きだす。交渉の結果、ちょっと早いけどレストランに入れることになったので、ちょっと高級そうな中をどこか場違いな雰囲気で動く。予約の部屋はまるで貴賓室(^^;;のような立派な家具が立ち並ぶ。全員揃うまで記念写真を撮ったりして待つ。やがて、ビールやワインが回りお食事開始。すると、全員がひとことずつ何かしゃべることになり、和やかな場が一瞬にして緊張感に包まれる(笑)。

 その後、先生が買い集めて来て下さったワインやビールで、ホテルに帰って打ち上げ...ということに。私たちは本隊とは別の遅い便で帰国するため、その打ち合わせをフロントで。最初の予定では、朝出発する本隊と一緒にマルセイユ空港まで行き、その後皆さんをお見送りしたあと空港に荷物を預けて時間まで観光...というつもりでいたのだけど、空港では荷物を預かってくれないことが判明(治安の関係で)。ってことは、空港まで無理矢理ついて行くとしたら、その後の観光はトランク等の荷物を持ったまま、ということになる。マルセイユ空港がもっと大きいところなら、そこで時間もつぶせるだろうが、なんせ地方の小空港なので、とてもそんなことは期待できそうにない。「どうしますか?」と決断を迫られる。居残り組5人の中で、察するに、本隊に未練があるのはどうやら私だけ(^^;;らしい。それに、中の1人には熱があってゆっくりした方がよさそうだ。ということで、ここは最年長として大人の決断をしなくては。で、最終的には「それじゃ皆さんとは朝ここでお別れして、私たちはホテルに荷物を預けてこのあたりで観光し、昼過ぎに自力で空港に向かいます」ということに自分で決定。そりゃあそれが無難よね。でも寂しい(涙)。...しかも問題はさらに深刻で、マルセイユからの便が遅れた場合、乗り継ぎの時間が少ししかないので、トランジットできない場合がある。そうすると、私たちが乗るJAL便はその日は夜行便がない曜日に当たっているため、丸1日パリで足止めの可能性が高い、と言われる。呆然。中には、パリでの足止めを密かに期待している人もいたけど(万一そうなった場合は全部航空会社持ちでパリに泊まれるってことだから)、私は仕事の問題もあり、みんなが帰っちゃったあとの海外になんかこれっぽっちもいたくないということもあり、とにかく帰れなかったらどうしようという不安でいっぱい。ただでさえ泣きたい気分だってのに。不安やら心細さを抱えたまま呑み会へ。一部の人たちに「明日の朝ここでお別れ」と告げると「えっ、どうして」と言われ「寂しいねぇ」と言われて、湿度95%(^^;;。明日の朝は絶対号泣すると予告しながら寝る。

杉野さん