長谷川操

「3人の珍道中 パリ編」

5/15(火)快晴

楽しかったベルギー・南仏演奏旅行も無事終わり、僕(ミサ)と安代と知恵さんの3人は一足先に帰国の途につく。

 昨日はアビニョンの街を歩き回った後、特急列車に乗ってマルセイユの街まで足を延ばし、地中海を見てきたのだ。約1時間の列車の旅。小高い山の上の教会からマルセイユの街とそれを囲む地中海が一望でき、それはそれは素晴らしい眺めだった。まるで映画の一シーンのよう…。これからマルセイユ行くよなんていう人がいればぜひ足を運んでおくれやす。もう一見の価値あり間違いなし。

 つまり帰国の前日はとてもたくさん歩いたので、なんとなく足腰が痛いような気がするのだが、そんなことも言ってられず7時起床。8時にマルセイユ空港まで送ってくれるタクシーが来るので、それまでに朝食を済ます。さすがにまだ誰も起きてきてない…。知恵さんは起きたのかな?と心配になる。

 さてお迎えにきてくれたタクシーの運転手はダニエルさん。デュペイがちょっと老けたような気さくなおじさん。タクシー運転手らしからぬカジュアルなこざっぱりした装いで車はワーゲンだ。杉野夫妻や琢ちゃん、信夫さん他10人ぐらい見送りにきてくれて、いよいよ皆とお別れ。この時点でよもや僕たち3人が無事に帰国出来なかったとはまだ誰も想像していなかったに違いない。

 なんでも、前日同じルートで帰国した若菜は天候不良が原因で、パリでトランジット出来なかったらしい。今日は天候もいいし、まさか飛行機は遅れないだろう。でもパリでの45分の乗り換え時間は心もとない感じがするねえなどと話しながらタクシーは走る。(この不安が、後に現実のものになろうとは夢にも思っていない)パリの高速道路は広くて走り易そう、運転手のダニエルさんは時速120〜140kmぐらいで快調に飛ばす。海が見えたな、再び地中海だと思うと程なくマルセイユ空港到着。アビニョン〜マルセイユまでちょうど1時間ぐらいということになる。タクシー代は600FFとツアコンの斉藤さんに言われていたが、チップ代として50FFプラスして650FFをダニエルさんに払う。ここでダニエルとはお別れ、どうもありがと。

 さてマルセイユ空港の中へ。早めにチェックインしなければと思い搭乗ゲートは何番じゃ?と掲示板を探す。AF7663便は 11:00発なのだがチェックインは10:00〜 と空港係員が指示してくれた。まだまだ時間があるのでここぞとばかりお土産を買う。どうもここ南仏はポプリの匂いがきつくてこの空港のお店もとってもプロヴァンスくさい。ここで関さんと高ブーにプロヴァンスくさいお土産を買ってしばらく車に放置(2人とも練習に来ないので渡せない!)しておいたら、うちの風道(Wing-Road )くんはとってもプロヴァンスだった。それとマルセイユでもそう思ったのだが、なぜか蝉グッズがとても多い。それも気持ち悪いくらい。後で聞いた話だがどうも蝉はこの地方では魔除けらしい。記念にマグネットを一つ購入する。

 さて10:00近くとなり、ぼちぼち搭乗ゲートへと向かうと、なぜか沢山の人だかり。どうも飛行機が遅れているらしい。見るとオルリー空港行きの9:30発の便がまだ飛んでいない。オルリー空港はパリの国内便の発着空港(ドゴール:オルリー=成田:羽田)でその便が遅れているとはやな雲行き…。パリは天気が悪いのかな?だったら僕らの便もやばいのでは…と不安がよぎる。

 ほどなくチェックインが始まり、美人のエアフラお姉さんにいろいろと説明を受け成田行きAF-276便(13:15発)のチケットも受け取った。これならちゃんと帰れそうだねとお互い納得して、重量制限19.9kgギリギリのトランクともここでお別れ。また成田で逢えるといいね…。

 さてさていそいそと搭乗ゲートへ。待合席で待つこと30分、ぼちぼち出発時刻の11:00なんだけど一向にゲートが開かない。僕らはパリで45分しか乗り換え時間がないのだから一刻も早く飛び立ってほしいのに…。なんか仏語でアナウンスしているようだけど皆目理解できず??? 11:20になってやっとゲートが開き、いざ飛行機へ。座席はこれまた最後尾の奥でこれじゃドゴールですぐに降りれない。いろんな不安がよぎるが、これまた飛行機は飛ぶ気配なし。「おいおい、マジかいや。これじゃ絶対ダメだ、仕方ないパリ観光かな」と半ば諦めムードが漂う。と突然3人なぜか猛烈な眠気に襲われ、しばし数十分熟睡したらしい。目が覚めた知恵さんが「パリ着いた?」と聞くも、まだ飛び立っても居ない…。ええっ、どういうこと?

 やっと飛んだ。しかし既に12:00過ぎてる。飛行機ってとばせば早く到着するもんなんだろうか?出来ることなら最高速で飛んでなんとかトランジットさせて欲しいと願う。眼下には青い青い地中海が拡がる。

 さて機内、乗換えが心配なのでエアフラのスチュワーデスさん(おばさん)に「成田行きAF-276便に乗り継ぐのだけど間に合うの?」と聞いてみたところ、しばらく考え込み満面の笑顔で「OK!AF will be take care of you! 」と答えてくれた。絶対だな、ちゃんと面倒みてくれよと日本語で言い返し、最悪の事態のシュミレーションを始める3人。ドゴールでの到着ホールは「F」と教えられた。成田行きもFホールから出発する。同じホールなら待っててくれるかもしれない。(若菜は違うCホールについて間に合わなかったらしい)最悪でも走れば間に合うかもといろいろ考える。

 ドゴール空港に着いた。時刻は13:15。この時間は乗り継ぎの成田行きが出発する時間なのだ。いやこりゃ絶対ダメかな?と思うも一縷の望みを託し、急いで出口へ。最後尾の座席なのでなかなか出れないのだがなんとか人を掻き分け、掻き分け着いたホールは「D」。なんとFホールじゃない!「ええっ、どうやって行けばいいの?」と3人途方にくれるが「Fはこっち→」という矢印を見つけ走る。後で判ったのだけど、このD→Fのホール移動は専用バスみたいなものが走っているらしい。(事実、翌日帰国した皆は乗ったはず)ところがそんな余裕など皆無は僕たちは、とにかく走る、走る、走るぅぅぅ。どれぐらい走ったかというとD→Fのちょうど中間点に、行きに乗った新幹線タリス号の駅があると思えば良い。つまり1kmぐらい走ったのだはないかな?高校卒業以来、こんなに走ったことがないというぐらい一生懸命走った。疲労困憊の僕たちはやっとの思いで、ゼエゼエしながらFホール到着。「成田行きは?」と掲示板を探すもいくら見てもAF-276便がない!なんで?運休なの?と思い係員に聞くてもチケットに書いてあるF56ゲートはそっちだ!としか教えてくれない。だからそんなことはわかってるんだってば、成田行きはまだ飛び立っていないかどうか知りたいのにと焦りは募る。ゲートが変わったのではないかとかいろいろ探しているうちに掲示板に突然AF-276の文字が。横には「Departed(出発しました)」。あらら遂に乗り遅れてしまいました。こんなに慌しい乗り換えプランを設定した近畿ツーリストを恨む。3人ドゴールに置いてけぼり…。

 さて気を取り直して、まずは帰りの飛行機を確保せねばならない。早速AFカウンターに並ぶ。これがまた長蛇の列。みんなマルセイユからの客なのかな?いろんな国籍の人が並んでおりみんないらいらした様子。やっぱり飛行機乗れたら怒るよね、どの国の人でも。初の中継落ち(貨物用語:乗り継ぎに失敗すること)をくらった僕たちはやや勝手がわからずあたりを見渡すと、なんか見るからに日本のツアコンらしきお姉さんが後ろに並んでいるのを発見した。そこでこのお姉さんにどうしたらいいか尋ねてみると、多分深夜便に振り替えてくれるとのこと。ちなみに深夜便は23:30発なのだ。

 やっと僕らの番がめぐってきてエアフラ係員に「おたくの会社のマルセイユからの便が遅れたので成田行きの便に乗れなかった!」と身振り手振りで説明。係員の美人なお姉さんは「OK」といい、カタカタとパソコンを叩く。「可能であれば夕方のJAL便に変えてくれ!」と頼むもそれは無理らしい。これに乗れたら一人寂しいオグさんと同じ飛行機だったのに残念。後ろのお姉さんは18万円払ったらJALに乗せてやると言われたらしい、それはどうかんがえても無理な相談だな。さて無事深夜便のチケットが確保できた。美人の係員お姉さんはとってもわかり易い英語で「22:30 までに空港に帰ってきてね」と念を押してくれた。ちなみにただいまの時刻は 15:00。まだまだ陽は高い…。

 まず帰れないことが判明したので、明日出社できない旨を会社の上司に国際電話する。(知恵さんは校長先生に電話してた)ところがこういう時に限って電話番号書いたリストがないのだ…。しかたないので先輩に電話するが出ない。何人かPHSや携帯に電話するも誰も出ない。現在日本は夜中の23時30分ぐらいなんだけどな。仕方ないのであきらめる。出国前、僕が出社しなかったら乗り遅れたと思ってと言ってきてあるのでまあ大丈夫だろう。後で判った事だが国際電話の着信履歴は「発信先不能」らしい。後輩はPHSが壊れたと思ったらしい。それは僕がやっとの思いでかけたパリからの国際電話だったのにねぇ…。

 せっかく乗り遅れた(変?)のだからパリの街へ繰り出すことにした。お腹もすいたし何か美味しいものでも食べようという趣向だ。到着カウンタを降りていくと「ミキツーリスト」なる日本語が見える。実はこれ近畿ツーリストのフランス現地法人でこのツアーのホテルやTGVの予約も全部この会社がやってくれていたのだ。その事を僕は知っていたので、カウンターの少々しょぼくれたまるで仏語など話せなさそうな(失礼)叔父さんにこれまでのいきさつをあれこれと話す。すると意外な事実が叔父さんの口からこぼれる…。「昨日もマルセイユから来たっていう女の子が1人来てね、やっぱり昼の便の乗れなかったみたいでねぇ…」えっ!それって若菜じゃないの?3人顔を見合わせて頷く。(続き)「またその子があんまり疲れたので後ろで横にならせてもらえませんかって言うもんで可哀相だから寝かせてあげたんだよ」だと。あらあら、さすが大胆な若菜、君はどこでも生きていけそうだね。(→この話が事実かどうかは定かではない、本人未確認)叔父さんに意外な事実を教えてもらい再度この不可能な乗り換えを設定した近ツリさんを恨む(2回目)。この叔父さんにパリまで安く行ける方法を教えてもらい、観光地図をもらっていざパリの街へ出発。

 空港から出るロワシーバスという手段が一番安くて確実らしい。乗車時に48FF払って、3人は一路パリへ。実は昨年の春、私達夫妻はパリ旅行をしているのだ。だから今でも結構街は歩ける。バスをオペラ座の前で降りる。う〜ん、懐かしのパリですな。オペラ座の前にはホテル「ル・グラン」があり有名なカフェ「カフェ・ドゥ・ラ・ペ」があり遥か向こうにはルーブル宮殿が見える。オペラ座の中は見学可能なので入ってみると残念ながらリハーサル中で座席には入れなかった。有名なシャガールの天井画が見れないのは残念。でも入口だけでもその装飾は見事で、これだけ見てもフランス人のゴテゴテハデハデ主義の一旦を垣間見ることが出来る。またオペラ座の外の彫刻も立派で良く見ると有名な作曲家の肖像が彫ってある。モーツァルト、ベートーベン、ウェーバー、ベルリオーズなどなど。上には金ピカの黄金の竪琴をもった黄金の翼の生えた黄金の天使像が立っている。いつかはここでオペラも見てみたいものですな、今回は時間もないのでお預け。

 さて空港で相当な運動量を消費し、昼飯も食べていない僕たちはお腹がかなり空いている。オペラ座の周りを徘徊してレストラン「ビストロ・ロマン」なるお店に入る。店内はとても綺麗で席も通りに面した明るい場所を案内された。街行く通行人を見ながら、ワインとムニュを注文。お料理は好きな2品を組み合わせて頼めるシステムで3人いるから全部違う組み合わせで計6品を注文。これがまたとてもどれも美味しい料理でとても満足でした、ご馳走様。

 お腹も満足したところで、パリの街を散策へ。ウィンドウショッピングしながらルーブル美術館の方へ歩き出す。さすが大都会だけあり人が多い。さらに日本人も多い。特にOL風の若い娘や年配のオバチャン達が多い。みなこんな時期(GW直後なのに)よく来れるね?と感心する。さて15分ぐらいタラタラ歩くとルーブル美術館到着。この美術館はほんとにでかい。初めて見た知恵さんもびっくり仰天していた。多分1日では全部回れまい。ルーブル宮というのはベルサイユ宮殿の離宮なんだそうでその離宮がこんなに大きいのだ。つまりベルサイユ宮殿はもっともっと大きい。これを見ると日本のお城って小さいなと実感すると同時にヨーロッパのスケールの大きさに唖然とする。もう19時ぐらいなので美術館中には入れず、横を流れるセーヌ川のほとりへ。遥か向こうにはエッフェル塔が、反対側にはノートルダム寺院が対岸にはオルセー美術館が見える。セーヌ川では川下りを楽しむ大きな船が走っている。パリはいいなあ、またゆっくり来たいもの。もう時間なのでまたロワシーバスの発着所であるオペラ座まで戻るが、歩き疲れたので帰りは地下鉄に乗る。パリの地下は8FF。通勤帰りなのか結構混んでる、車両はあまり綺麗ではない。3駅ほど乗って到着。程なくバスが来てパリの街ともお別れ。また来れるかな…?とやや感傷的。

 さてそんなこんなで再びドゴール空港。思いがけず飛行機に乗り遅れて実現したパリ観光もなかなか楽しかった。あとは日本に帰るだけだ。いろいろ楽しかった思い出をのせて…、ああ明日からはまた会社(学校)と思うと気も重いけど。以上3人のパリ珍道中でした。

ミサ

みささん・やまぐちさん