平田薫

5月13日(日曜日)

 狭いバスの中で一夜を過ごした私たちを迎えてくれたのは、朝焼けの色そのままに街の華やかさが伝わってくる、巴里。(と漢字でおもわず書きたくなってしまう!)白色の街灯がにじむ中、ドーン・ピンクのスクリーンに浮かぶ街のシルエットにため息がでてしまいそうなそういう色濃い街。いつもパリは経由場所で、ここに来ている感覚はないのだけれど、機会があればどっぷりと浸ってみたいですね。

 ベルギーからパリまでは実はあまり距離がなく(ほんとは3時間ほどで行けるらしい)それを休み休みきて、パリの駅前で列車の時間まで待つことしばらく。なんと朝ごはんは日本米おにぎり(中身はしゃけ、昆布、梅干&卵焼きとから揚げ付きというまさにバス遠足弁当)で私としては、みょーにうれしかったです。それにしてもあまり冷え込まなくてよかった。帰国組の3人に見送られ、高声系と低声系に別れて列車に乗り込む私たち。

 列車のたびが基本的に一番好きなのでバスの疲れもありましたが結構景色をずーっと眺めていました。爽やかな田園風景のやわらかなみずみずしい緑が、南の強い日差しの下で濃い緑に変化してゆく。また、大地が褐色になってぱさぱさと乾燥してゆく感じ。ほんの数時間でまるで世界が変わってしまうのは旅の醍醐味です。

 11時過ぎにアビニヨンについた私たちを所変われば人変わるという感じで、ハイテンションのガイドさんと、真っ赤なシャツのとても似合うバスの運転手さんがお出迎え。そしてバスに乗って城壁に囲まれた街を通り過ぎちょっと郊外のホテルへ。結構慌ただしいスケジュールの日であった・・・・。イビスという名の(えびすではない)ホテルで必要な荷物を持って出るまで20分足らず。いざヴェゾン・ラ・ロメーヌに出発しました。途中、安保さんから近隣の村の説明や、カロスで来たときのことなどをあらためて聞いて今回の演奏旅行につながる経緯を思いなおしていました。

 ヴェゾン・ラ・ロメーヌで昼食は皆で栗山先生おすすめの山の斜面にあるレストランへ。中庭でじつに優雅なランチをいただきました。ワインがとっても美味しい。ここら辺で、ようやく南仏にきたという実感が湧いてきました。ヴェゾン・ラ・ロメーヌは古代ローマ遺跡の多いところで、会場となる教会も古代ローマ時代の部分があるらしい。石の文化とはおそるべしと、こういうとき思いますね。

 控え室が遠く結局バスの中で着替えなどを済ませることにしたので、着替えたあと、お客さまが教会に来るのを入り口で待ち構える形になってしまいました。みんなして、ボン・ジュール ボン・ソワール(こっちのガイドさんに、フランス人は何時からボン・ソワールと言うかと問いかけされたので、どっちで返事してくれるか実地でしたが、素直にボン・ジュールでしたね)と挨拶してました。

 3日連続最後の演奏会。この日のプログラムのみ外国の合唱曲が入っていて、少々緊張してましたが本番はおもいきっていけたと思います。 メッタスッタは、実は教会で演奏することによって、自然と東西融合されてしまうものなんだなあと、思ったのでした。反応が「何これ?」ではなく「東洋だとこうなるのね。」みたいな感じで逆に日本人の方が祈る場を持たない分、違和感が大きいかも。

 アンコールで赤とんぼを歌いました。実は日本人の方がいらしていて、その方が涙ぐむのを目の端でとらえてしまい、ただでさえ感動で泣きそうだったのに、もらい泣きしてしまいました。 やはり、こういう町の教会で演奏すると、伝わってくるものが違います。演奏会が終わっても日が落ちきっていなく明るい中、みなで外でお客様をお見送りしました。喜んでもらえてほんとによかった。一番うれしい瞬間でした。

 この後、打ち上げ会場にいったのですが、まだ時間が早く用意ができてなくてバスで町中を回り、遺跡のローマ劇場とか、また脇を通ってくれて見たりしました。

 会場は研修センターのようなところで、小学生の子供たちが食事をしていて例によって歌う私たち。

 この日、ヴェゾンの合唱団が別の町で演奏会をしていて、あまり合唱関係の方々がいらっしゃらなかったこともありベルギーのときのようなわーっとした盛り上がりはなかったのですが最後の演奏会が終わって、話がはずんでました。バスの運転手さん( )に日本酒をすすめたりしてたんですが、グラスに残る感じで、「これはアルコール度が高いね」となかなか、お酒にくわしいかたでした。お子さんの写真を見せていただいて、とってもパパの顔をしていて実は家に早く帰りたいらしい。「にんじん好きなんです」と添乗員の斎藤さんが山盛りのにんじんのスライスをのっけた皿を前に旅行の苦労話を聞いたりしてました。

 演奏会の用意をしてくださった  さんが歌ってくださり、心がこもっているっていうのはこういうことなのですね。と思いました。私たちもお返しに何曲か歌いました。

 お土産係の私とのんさんは、お仕事的には最後の日で、予想通り、予定外というのが多く、キャーってな感じで、かなりパニックしてました。合唱団のみんなにもいろいろ用意してもらったのにあまり渡せる機会がなくてごめんなさい。でもとりあえず、無事終了しました。

 宿へ帰ると、演奏会も終わった今、これから3晩連続、信夫さん部屋での宴会が待っているのでした。

まるさん2