OMPコンサート・レポート

東京スーパー・デュオ・ガラ・コンサート

1997.2.20 (東京国際フォーラム・ホールA)

■東京スーパー・デュオ・ガラ・コンサート
 日時 1997.2.20
 場所 東京国際フォーラム ホールA
 出演 モンセラート・カバリエ
    ペーター・ドヴォルスキー
    佐藤しのぶ
    ホセコラード指揮/東京フィルハーモニー交響楽団/栗友会合唱団

●プログラム
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第一部 〜カルメン・ハイライト〜
・ビゼー 歌劇「カルメン」より前奏曲
               合唱"闘牛士の歌"  ゲスト:宇野徹哉
               "何を恐れることが" 佐藤しのぶ
               "花の歌"      ドヴォルスキー
               "故郷へ帰ろう"   ドヴォルスキー・佐藤しのぶ
               "ハバネラ"     カバリエ・合唱
第二部 〜イタリアオペラ名曲終〜
・ヴェルディ 歌劇「ナブッコ」より ヘブライの捕虜たちの合唱 合唱
・ヴェルディ 歌劇「オテロ」より 柳の歌〜アヴェ・マリア   カバリエ
・ヴェルディ 歌劇「運命の力」より 神よ平和を与え給え    佐藤しのぶ
・プッチーニ 歌劇「トゥーランドット」より 誰も寝てはならぬ ドヴォルスキー
・チレア 歌劇「アリアドーナ=ルクブルール」より間奏曲
      私は卑しい芸術の下僕です             カバリエ
      いいえ私は考えを変えることは出来ません カバリエ・ドヴォルスキー
・ヴェルディ 歌劇「椿姫」より 乾杯の歌
                 カバリエ・ドヴォルスキー・佐藤しのぶ・合唱
・アンコール:
 ロッシーニ/2匹の猫の滑稽な二重唱 
 バルビエリ/サルスエラ「ラバビエスの理髪師」より「パロマの歌」
 レハール/「メリー・ウィドウ」より「唇は黙っていても」
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■感想(PC-VAN SIG『クラシックコンサートホール』より転載)

演奏会>東京国際フォーラム・ガラコン(97.2.20)   からから!

 合唱団OMPが、東京国際フォーラムのガラコンサートで
オペラアリアの演奏会のコーラスとして出演するというので聞いてきました。


●東京国際フォーラムとホールAの印象
 JR有楽町駅を降りてすぐの入り口からガラスホールと呼ばれる建物に入った。
 ここから地下にはいると展示場などの多目的スペースがあり、その先がホール
A,B,C,Dへの連絡通路、この通路は地下鉄有楽町駅の改札口にもつながっている。
(ということは、地下鉄から行くのが一番便利と言うことかな)
 地上の出入り口は、線路とは反対側の面の道に開いている。
 それにしても巨大な施設だ。中に入ってから延々と歩いた。

 エントランス。あちこちにエスカレータが有るがどれも、なんだか狭い。
 しかし、終演時に他のホールと比べて格別に混みあったということもなく、
一つずつは狭くてもあちこちが通路になっていてそれなりに計算されているよ
うだ。
 ただ、クロークはスタッフがまだぎこちないというのはともかく、5,000人の
ホールとしては窓口の規模が小さい気がする。NHKホールより並ぶかも。

 内装は、金属部分のグレーと木の肌の色。なんとなく「都会」をイメージさせ
るシャープな直線を多用した空間だ。
 お金がかかっているというようには見えないけれど、安っぽいと言うほどで
もない。

 さて、私のチケットは、一階の最後部よりほんの少し前というあたり。
 ホールに入ってみてその巨大な空間に驚いた。5,000人というキャパシティー
から想像はしていたが、外から見た印象よりさらにまた一段と巨大に感じる。
 客席は2Fまで。5,000入る構造の秘密は、客席部分の横幅にあると見た。
 舞台部分の横幅はおそらくNHKホールと同じくらいだと思うのだが、客席が1F
最前列から、舞台の幅より10数メートル広い。
 つまり、ホール前列から30番くらいまで、左右10席ぶんくらいに座ると、
舞台の左右の奥の部分…今回の場合なら、合唱団のソプラノの隅のほうなど…
は見えない。
 講演会や歌謡ショーみたいに、舞台中央しか使わない出し物は良いのかも知れ
ないけれど、クラシック系では、左右両端の席は、見えないし、たぶん音だって
悪いだろうから、ぜひ避けた方が良い。

 座席と音響の関係について言えば、1F席は前から30席ぐらいから後ろが屋根の
下になるので、ぐっと響きが減ずる。(初期反射音が少なく、直接音も弱まるの
で残響成分ばかりになる)
 とにかくこの2Fがひさしになっている部分がまた広い。(その分2Fの最前列は
ステージに近い) ひさしの一番奥は、結構屋根が低い。そして、ステージはとて
もとても遠い。
 2F席の一番後ろにも行ってみたが、NHKホールの3F席と良い勝負と見た。

 肝心の音響だが、私は1F席45列で、かなりひさしの奥。
 「こんなんで聞こえるのか?」と心配になるほどの場所だったのだが、
第一印象はとにかく「音圧が無い」しかし「残響がとても長い」
 つまり、上質のホールを遥か遠くから眺めている感じ。
 ホールの設計技術は進化しているのだろうが、絶対的な音量だけは
「いかんともし難い」という感じである。

 演奏が始まったばかりは、あまりの音の小ささに「聞き耳を立てる」という
感じだったが、慣れというものは不思議な物で2,3曲聞く頃にはあまり音の小さ
さは気にならなくなった。
 …しかし、ホールの音響として、演奏の善し悪しを云々するレベルでないのは
確か。多めの残響にすべて甘口の演出がなされるので、よほど前の方の席で聞か
なければ、少々のアラがあっても判らないと見た。

●演奏・客
 始めてのホールなので、客席をぐるりと一周してみたが、いわゆるS席の部分
にはたいそう外人客が多く、しかもスペイン語だった。
 都のホールのガラコンサートということでもあり、招待客はかなり居た模様。
 モンセラート・カバリエがスペインだからでしょうね。

ココさん>
> しかし大半の人はやはり、期待しているのはカバリエだけだったようですね。
> 真ん中の前の方にいたブラボー屋さんが、カバリエ登場だけで「ブラボー!」を
>かけたのには、ステージの上でしたが心の中で吹き出してしまいました。

 私は実はこれには気づかなかったのですが、一曲目が終わった瞬間の怒濤のよ
うな2,3人のブラボーは、浮きまくっていました。しかも、曲を追うごとに力が
無くなっていった。
 どうも、単なる推測ですが、都の職員か何かがサクラで盛り上げようと頑張っ
たんじゃないかという雰囲気でした、あの浮き加減からして(^^;

 とにかく、連日の興業で5,000人という大ホールなのに、客席はぎっしりでし
た。そして、ホール見物が中心みたいな客層でありながら、なぜか演奏中はとて
も静粛で、音圧は無いなりに快適に聴けました。

 さて、ようやく演奏ですが、オープニングのカルメンの前奏曲が鳴った瞬間に
は、まるで宇宙の向こうからの通信のようなかそけき音で、心配になってしまい
ました。
 その後の拍手にしても、会場の向こうからぐる〜っと回ってくるのが分かる感
じ。これは、演奏の善し悪しなんか関係ないです(^^;
 次の"闘牛士の歌"、ゲストの宇野徹哉氏の歌で。
 細かい部分は音響のためにわからないのですが、なんとなくへなへなした音だ
なぁと感じました。もうひとがんばり。
 つづいて出てきた佐藤しのぶ、ドヴォルスキーはさすがに安定。このあたりに
なるとこちらの耳も慣れてきて、音量についての不満も感じなくなりました。
しかし、最初に出てきた男声とドヴォルスキーが別人だという事に気がつくには
時間がかかり(何しろ顔の判別がつかない距離だから)、私は、同じ人がだんだん
調子が出てきて声が出てきたな〜と思っていたのでした(笑)

 そして、一部最後のハバネラで出てきた「カバリエ」
 始めて見るのですが大きかった…。自力で移動できる限界の重量に達して居る
んじゃないかと思うほどの大きさでした。そして、声もサイズに比例してか、
佐藤しのぶに比べて厚みのある音でした。
 なかなか楽しいステージでしたが、後半もますますにぎにぎしい感じでした。

 合唱については、技術的にはいつもの栗友会らしい安心できる物でしたが、
ホールの音響もありますが、ふくよかな響きで、オペラらしい豪華な感じが出て
いたと思います。
 なかなか良かったのではないでしょうか。
 残念だったのは、合唱の出番が少なかったことぐらいですね(笑)

 最後に、アンコールで歌われたロッシーニの猫のなんとかと言う曲は、
カバリエと佐藤しのぶが猫の声色で歌うコミカルな物で、客席は大受けで楽しく
終わりました。

 新しいホールを見て、大物の演奏を聴いて、お買い得な演奏会でありました(^^)

からから!

演奏会>東京国際フォーラム・ガラコン(97.2.20)  モー ★内容  私はまずは正攻法ということで地上から攻めていった.  JR有楽町駅を銀座と反対側の出口から出てすぐ.と思いきや、施設が巨大なので 、入り口になかなかたどりつかない. 当然のことながら皇居がある方が玄関口.駅 から来る人は裏口から遠回りして入ってくることになるわけだ.  玄関口のスペースが横に広いのに「もぎり」が数列しかいないので、真ん中へんだ けでしか作業が進んでいない.(これと似た光景は、北区役所に行くと見ることがで きる.)  招待券を握りしめたおばさん達の集団でごった返していた「もぎり」を突破すると 左右にクローク.これはからから!さんの書いておられるようにキャパからすると貧 弱.(そろそろ日本のホールもヨーロッパの劇場のようにエントランスは一面クロー クというような仕立てにしてもよいと思う)ここはコートを預けず無視して前進した .  最初の目的地は自分の席だが、音楽に浸る前に行きたいところもあり、多少そ れらしい所をサーチしながら動くことにした.  ところが暫く動いても、長年の経験で蓄積されてきた(大体このヘンにあるだろう) という勘が通用しないことがわかってきた.この巨大な構造物が、新しい理論に 従って建造されていることが現実問題として徐々にクローズアップされることになって きたわけだ.  刻々と迫り来る開演時間と、徐々に副次的な目的地から最重要地点へと昇格してい くことになったとある場所の探索は、あっけなく終了した. 廊下の壁はパネル状の 模様になっており、有事には非常階段として使用される部分や普通の階段として使わ れる部分が違和感なくすっきり収納されるしくみになっている.そんなところに、目 標も迷彩されてすっきりと収納されていたのであった.  先ほどまでの最重要地点から揚々と引き揚げながら、ちょっと歩くと初期の目的地 をほどなく発見.貧すれば鈍するというが、その逆もまた真なりなのである.  さて目的地に潜入すると、天安門広場のような広大な空間が眼前に現出した.当然 見えるものは全て人の頭ばかり.  この日は、カザルスホールで東京混声、N響定期、東響定期、紀尾井で武満特集、 フォーラムCでは同じく開館記念の「青髭公」など集客量の多そうなコンサートが 目白押しのため5000人のホールで満員はないだろうと予想していたのだが...  席ではまず椅子のチェックをおこなった.幅、前後の間隔、座り心地、きしみ、 バネ、暖まり具合等、いずれも水準以上であった.池袋の安物劇場の轍は踏まない らしい.但し横は繋がっている仕組みなので、同じ列の誰かが振動波で 攻撃してきたらひとたまりもないことが予想される.  しかし、舞台の遠いこと.まるで9インチのCRTを見ているかのようだ.  カルメンの前奏曲は、同じ東フィルで2/9に多摩で聴いてきたばかり.あの時は前 から5列目で今回は45列目である.  音の強さは距離の2乗に反比例することを確認した.  かそけく聞こえてきた「闘牛士の歌」.てっきりドヴォルスキーが歌っているのか と思いきや、#7904によると別人とのこと.確かに全然声が違うが、カルメンをカバ リエがやるならエスカミーリョをドヴォルスキーが歌うんじゃないかと思うのが人情 というものだろう. 期待の合唱団は、バランスの良いすっきりとした声質で歌って いた.  次は佐藤しのぶのミカエラ.以前二期会で聴いた時よりはずっと声が出ている感じ .(あの時は、彼女は身重でホセに「あんた帰ってきておくれ」と歌うのが妙に説得 力があった.)  さて、カバリエ登場とともに、近くのおばさん達(やたらおばさんだらけだった. )が恐らくその貫禄に対してどよめき、前の方からはブラボーは出るは、合唱団から 「おいおい」の声が出るは(嘘).  しかし、カバリエにカルメンというのは、声質からしてやはり違和感は否めない. とりあえず風邪は治ったらしいということを確認した.ハバネラの合唱も、すっきり と縦の線が整った端正なものであった.  休憩時間は、隣の席いた結婚話を公開したばかりの幸せそうな人と2階の登頂に挑 戦した.横幅の狭いエレベーターでいけるところまでいき、ホール内に入ってからま た10m以上は登らなければならない.  2階最後列から舞台を見ると、実に遠い.5インチぐらいの液晶TVで舞台を 見ている感じと例えられようか. 恐らく2階の真ん中ぐらいがNHKホールの 3階最後列というぐらいの距離のように思えた.  この大きな空間が一本の柱も無く存在していること自体が不可思議. しかし地震の時は、凄く怖いに違いない.  さて、後半の演目. まずは、「ナブッコ」の有名な合唱曲.端正な歌い方だがレ パートリー的な安心感をもって聴くことができた.  後半のカバリエは全絶品.世界をまたにかけて活躍してきたカバリエの面目躍如と いったところ.あの体躯から絞り出される声が、世界中の人を魅了し続けてきのかと 感慨をもって聴くことができた.  佐藤しのぶも日本人の埃といったものを見せつけてくれた.カバリエがメルセデス とすると、ホンダアコードぐらいの活躍ではあるのだが、大健闘と言えるだろう.  ドヴォルスキーの「トゥーランドット」からのアリアは、まわりのおばさん達が痺 れている様子だった.かなり格好いい.  さて、アンコールで印象深かったのは、会場の笑いを誘いながらロッシーニの「猫 ...」猫の擬音はやはりスペインと日本では違うようで、シャム猫と三毛猫が会話し ているような不思議な感じがした.  最後のアンコールの「メリーウィドウ」も良かった.あのほっとした感覚はイタリ ア〜スペイン系のどこか張りつめたところのある音楽からは得られないものだ.  さて、最後に合唱について. 音程、バランス等申し分なくまずは合格レベルだと は思うが、贅沢を言わせて貰えればこの手の曲の合唱では主役を喰うほどの表出性が もっと必要と思った.少々合唱が耳障りに感じるぐらいに積極的にオペラの世界に踏 み込んでようやくバランスが取れるのではないか.しかしこういう個性もあり得るか もしれないので私の好みの問題かも知れない.もっともっとこの手の曲も歌って欲し いものだ.  全般的には、予想以上に充実した演奏会で、安くチケットを譲ってくれた究生さん には大感謝.  終演後は「のろけ話」の片鱗も聞けたし(笑)    モー

唐澤清彦 k-kara@mtb.biglobe.ne.jp