OMPコンサート・レポート
a

笠懸野特別演奏会('97)

1997.8.10 笠懸野文化ホール(群馬県新田郡笠懸町)

■プログラム
1.<宗教曲集> 谷川の水を求める鹿のように G.P.da パレストリーナ 主よ、人の望みの喜びよ J.S. バッハ アヴェ・ヴェルム・コルプス W.A. モーツァルト アヴェ・マリア F. シューベルト 万軍の主よ、あなたのすまいはいかに麗しいことでしょう (「ドイツ・レクイエム」より) J. ブラームス <オペラ名曲集> 行け、わが思いよ、金色の翼に乗って(「ナブッコ」より) G. ヴェルディ ハバネラ(「カルメン」より) G. ビゼー 闘牛士の歌(「カルメン」より) G. ビゼー 乾杯の歌(「椿姫」より) G. ヴェルディ さちあれ芸術の館(「タンホイザー」より) R. ワーグナー 2.混声合唱とピアノのための カムイの風 −青ばと物語− 三善 晃 3.追分節考 柴田 南雄
■レポート/感想

笠懸演奏会のレポート(高田/テノール)


8月9日の土曜日の朝に家を出て、東武線の急行「りょうもう号」で約1時間30分の
群馬県新田郡の藪塚駅に到着。ここの直ぐ近くには時代劇「木枯らし紋次郎」の故郷「
三日月村」(フィクションなので実際にはこういう場所は無くて、観光用に村が出来て
います)や世界中の蛇類を集めて「スネークセンター」があります。(^ ^;)
東京から丁度100キロですが、関東平野の真ん中で広大な田園地帯が広がり、その向
こうには山々が青く煙っています。

駅にホールの担当者が迎えに来てくれ、10時半にホールに到着。挨拶もそこそこに打
ち合わせを開始しました。事前に打ち合わせはしていたものの、実際の演奏会のスケジ
ューリングや舞台・照明の打ち合わせは私では役不足。経験の豊富な演奏会スタッフに
任せて、私は専ら宿泊・食事・打ち上げ関係の打ち合わせ・・・。
厄介なのは演奏会終了後に一部で行くことにしているコテージの件。日曜日の午後5時
までに現地の管理事務所に行って、鍵を受け取らなくてはなりません。当然私達は行け
ません。それでこれもホールの人に頼むことに・・・。(本当にありがたいことです)
それと今日ホテルで飲むビールの調達先やコテージでのバーベキュー用の肉を買う店を
紹介して貰うなんていう事も・・・。m(__)m

舞台には既に山台が設置してあったのですが、形と位置を再度調整しました。
午後1時に団員が到着、発声をして練習を始めましたが、どうも栗山師は響きが「もや
ついて」言葉が聴こえないのが気に入らない様子。ホールスタッフと相談して山台をギ
リギリまで前に移動しました。こういう設定は中々難しいのです。
特に栗山師は前方に出したがるので、ピアノや他の設備とのセッティングが難しくなり
ます。

楽屋裏の通路には飲み物・果物がいつも用意されていて、休憩の度に自由に飲食するこ
とが出来るようにしてくれています。冷蔵庫・クーラーボックスには缶飲料も満杯にな
っていてホント至れり尽くせりです。(クーラーボックスにはビールも数本入っていた
のですが、練習終了時には無くなっていました・・・)(^ ^;)

オペラ合唱曲のリハーサルは普通に立って歌うだけではなく、フォーメーションの変化
とソリストとの絡みがあって中々大変です。動き過ぎるのもわざとらしいので兼ね合い
が難しいのです・・・。
続いて宗教曲のリハーサル。このホールは響きが良くて気持ちが良いです。
問題は音程が決まらないこと・・・。(^ ^;)

引き続きアンコールの練習。定期演奏会ではアンコールというものをやらなくなって久
しいのですが、こういう演奏会になると突如何曲もやってしまうのが・・・。
今回は4曲の予定・・・。

ということで、午後の練習終了。既に夕食の用意が出来ています。メニューはこの辺の
名物のうどんと蕎麦、それに焼おにぎり。近くの店から出前を取ってくれるのですが、
なにしろ全部で70人前以上。器もいっぺんには用意できず、2つに分けての食事とな
りました。本当にホールの方は大変です。

食事を済ませ、夜はいよいよ追分節考の稽古。尺八が入るのは実質的に初めてでした。
やはり響きの良いホールで演奏すると効果抜群でした。でも、個々には色々と問題があ
ります。暗譜が・・・。

夜は練習は早めに切り上げ、宗教曲のCDと追分節考(大阪シュッツ)とオペラのビデ
オを見ることにしました。
追分節考はなんというかテンポ感が一色で退屈でした。ソリストもとても立派な声なん
ですが、まったく民謡じゃなかったですね。今回私たちがやっているのとは全く別物と
いう感じでした。
オペラはそれぞれの曲の本来の悲劇的な情感や破天荒な雰囲気を感じることが出来、面
白く参考になりました。

今回のホテルは桐生市にある「国際キノコ会館」というホテル。市郊外の山の上にあり
、ホールからは少々遠く、急な山道ということで事故が心配という蓬莱先生の意見で、
車組もバスで移動。3年前の最初に演奏会をした時のの宿泊所は予算の関係で青年の家
(
^^;)。大部屋の上、冷房は午前零時で切られてしまうという所。でもホール館長の蓬
来泰三先生の口利きで本来飲酒不可や「朝の集い」は免除、先生曰く「あの団体には無
理だよ」とか・・・。(^^;)
2年目は一応ホテルだったものの、夫婦以外の男性はまとめて宴会部屋へ・・・。
今年は全てツインルームで空調も完備。各部屋の風呂とは別に地下には大浴場もあり。
この風呂が「キノコエキス風呂」というもの。(^^)といっても特に変わってはいませ
んでしたが。(^^)
夜はいつものように飲み会。あの狭いツインルームに何人入っていたのだろうか?


翌日、起きてみるとホテルの眼下には桐生市内が一望できました。 随分高台にあり、道もとても急な山道。蓬莱先生が心配する訳だ・・・。 朝食は和洋折衷のバイキング形式。ごく普通の料理でしたが、丁寧に作ってあって、ど れも美味しい。名ばかりのシティホテルより遥かにGood。 8時30分にホテルを出発し、丁度9時にホールに到着し、時間通りに練習開始。 14時開演ということでリハーサルは12:30迄の予定。3時間程度しか時間が無く とても慌ただしい。どの曲もほとんど一回通すだけです。 あっという間にリハーサル終了。食事をして開場。ホールのスタッフに「今回は当日券 が随分売れていますよ」と言われ、期待が高まりました。今までは300人程度の客の 入りで多少寂しい思いをしていました。 いよいよ開演。舞台に立つとほぼ半分強の入りの様子。後で聴いたところによると55 0人位だったそうです。次第に観客が増えているようでありがたいことです。 第1ステージは宗教曲。リハーサルの時の割りと芯のない響きが 観客が入ったためか 丁度良い響きになりとても歌いやすい。栗山師もいつもの本番のようにディナミークを 目一杯つけて来るので、こちらも気持ち良くやってしまいました。 第2ステージはオペラの有名なソロ&合唱曲集。リハーサルでもどうなるかと思ってい たソロもほぼ完璧。動きもまあまあだったと勝手に思っています。 第3ステージはシドニーで初演した「カムイの風」。5月の東京カンタートで再演して 以来の演奏になります。この演奏会に向けては一番練習をしていなかっただけに多少の 不安があったのですが、曲の良さが出せたかと安心しています。 ここでやっと休憩、ほぼ1時間経過。 休憩明けは問題の「追分節考」・・・。 観客の近くで一人で歌うというのはやはり緊張します。まだ、民謡の歌い方には自信が ないし。特に直ぐ近くには経験者のカロスの連中が座っているし・・・。(^^;) 今回の曲の指示は、よく使われる「団扇」ではなくて「笠」を使いました。といっても 普通の柄のある傘ではなくて、藁で編まれた頭に被る笠です。(渡世人がかぶるやつ) 「笠懸」と「木枯らし紋次郎」に因んだということも・・・。 「お」「い」「わ」「け」「ま」「ご」「う」「た」の8文字をそれぞれ笠に貼り、こ れを持った女性が指揮者の指示によって笠を上げ、これに従って男性が歌うという形式 にしました。これがまず正解だと思ったのは舞台上に「おいわけまごうた」の文字が並 んでいること。団扇で交互に出すと文字が飛び飛びで、何のことだか観客には判りませ んがこれならば大丈夫。それと指揮者が一人で団扇を出したり、引っ込めたりするのは どうも落ち着かないのですが、これなら指揮者は最小限の動きで済み、邪魔にならずに 済みます。笠とそこに貼った文字もとても綺麗だったのも演出的に大成功でした。 (笠だけで3万円以上出した甲斐がありました)(^^) 肝心の演奏のほうはいろいろと事故もありましたが、独特の空間を描くことが出来たの ではないでしょうか。 アンコールはまず武満徹の「うた」から「さくら」「翼」。そして「天までとどけ」、 最後に「あかとんぼ」というもの。 段取りが出来ていて「天までとどけ」のためにピアニストが控えているのに、栗山師は 一曲毎に悩んだふり・・・。 結局、4曲全部歌って終了。お客も喜んで貰えたようですが、我々も楽しめた演奏会で した。 舞台の撤収と打ち上げ会場のセッティングをし、打ち上げ開始。ここで失敗だったのは ホールの人に「スーパードライは出さないで欲しい」と言っておかなかったこと・・・ 。OMPの連中はビールのヘビーユーザーなのでドライは・・・。随分残りました。 7時過ぎに打ち上げを終え、オプショナルツアーに出発。しかしなにしろ車6台、22 人という大所帯。まず地図をドライバーに渡し、行き先の説明。しかし、地図にも出て いないような場所。無事に辿り着けるかどうか・・・? 今日の宴会と明日のバーベキューの買い出しに2台行くことにし、4台は先発。 私は前日に頼んでおいたホール近くの肉屋に品物を引き取りに。実物を見ると、どうも 人数とメンバー(大食いの女が一名・・・)を考えると足らないような気がして2キロ 程追加・・・。 カーナビを頼りに目標地へ、ここまでは良かったものの、そこから先が迷いました。な にしろ街灯一つ無い暗さ。なにしろ見渡す限りで三日月が一番明るい。(^_^;) どうにか到着すると、先発隊の無事に到着しており、風呂の準備等をしていたのですが 、なんとお湯が出ない。ガスレンジのガスも出ずに使用不可・・・。どうやら元栓に問 題があるらしい。管理棟はとっくに閉まっています。緊急連絡先になっている近所に住 む管理人に連絡しようとしたのですが、電話がありません。公衆電話も管理棟の中・・ ・(;;)。携帯電話も電波が届かず駄目。しかたがなく車で少し山を下りてやっと連 絡。管理人が来たものの原因が判らず業者に連絡。1時間以上掛かってやっと直りまし た・・・。(>_<) 色々あったものの3棟の内の一つを宴会部屋にし宴会。掘りごたつもあるダイニングは 全員が集まっても十分な広さ。キッチンも広くて中々良い。エアコンの完備しているし 、とても良い環境でした。 夜中に群馬名物の雷雨がありました。物凄い土砂降りと雷鳴でした。 飲み会は朝まで続き、徹夜したもの数名・・・。
翌日はバラバラと起きてきて朝食。(朝食は私が作ることに・・・) チェックアウトは10時ですが、バーベキューをするし、ゆっくりもしたいので1棟を 1泊延長。12000円ならば安いですね。(^_^) しかし、栗山師が「やっぱりバーベキューをしていると千葉大の合宿に行くのに遅くな る」と言って、出発することに。可哀相なのはドライバー・・・。(;_;) ここで、キノコ会館に連泊していた代表一家が合流。全員で近くの鍾乳洞に行き、見学 することに100m足らずの鍾乳洞でしたが、外界の暑さとは別世界の涼しさ。おまけ に20人以上の団体料金でOKでした。(^^) そこで栗山師を見送り、コテージに戻り、メインイベントのバーベキュー。 一同手分けしてバーベキューの準備に取り掛かったものの、みな経験が無く炭火をおこ すのは中々大変でした。炭に火が点いても中々火力が上がらずに時間が掛かってしまい ました。でも、火を熾すのは面白いですね。 火の用意ができたところで肉・野菜の準備も完了。みんな本当によく食べました。 当然ビールも飲んでいましたが、火のそばに居たため飲んでも直ぐ汗になってしまうよ うで酔いませんでした。カルビ3キロ、その他の肉2キロ、近くで買った地鳥を一羽、 その卵、野菜、焼きそば等々をほぼ食べ尽くしました。(^ ^) この地鳥は放し飼いにされていて、その卵をゆで玉子にしましたが、とても美味しくて 驚きました。コクがあって塩無しでも十分美味しい卵でした。そう、それとこの養鶏場 で青紫蘇を貰い、これを肉に巻いて食べると更に良かったです。(^ ^) みんな「数年ぶりの正しい夏休み」を経験できて大喜びでした。 私も企画した甲斐がありました。 後片づけをして、鍾乳洞近くの檜風呂にも行って来ました。薪で沸かしたお湯はなかな か快適でした。で、もっと快適だったのは外に出て涼しい風に吹かれたときですね。 正に「地球へのピクニック」(^ ^)(^ ^)(^ ^) またコテージに戻り、ホールから貰った西瓜を食べてやっと解散になりました。 そして私は親戚の居る町に行き、もう一泊。(^ ^) 火曜日は元足尾線の「わたらせ渓谷鉄道」に乗り、渓谷を遡りました。富弘美術館に行 き、駅にある温泉(水沼駅)にも行ってきました。駅のホーム沿いにずっと温泉の建物 があり、露天風呂・内湯・サウナと土産物売り場・食堂・宴会場が揃っています。 富弘美術館は不慮の事故により手足の自由を失った詩人星野富弘氏の故郷の村にある草 木ダムの湖畔に造られ、彼の詩とイラストや日記が展示されています。合唱曲にもなっ ている詩との絵の実物を見てきました。とても口に筆をくわえて書いているとは思えな い味わいのある字と立体感と質感に富んだ草花の絵は素晴らしかったですよ。また、人 と草花の「いのち」にまったく同じに向けられる悲しいくらいの優しさは感動的でもあ りました。人はあそこまで素直になれるものなのですね。 皆さんも機会があったら是非行ってみてください。 高田(夢幻)

編集:唐澤清彦 [コンサート・レポートの目次に戻る]