コンサート拝聴記'96


合唱団OMP & コーロ・カロス ジョイントコンサート・感想


日時:1996.7.21
場所:アミュー立川大ホール
出演:栗山文昭/コーロ・カロス、合唱団OMP
曲目:バード/4声のミサ           <カロス>
   2つのオーストラリア民謡(信長貴富編曲)<OMP>
   柴田南雄/追分節考           <カロス>
   三善晃/カムイの風 ー青ばと物語ー   <OMP>
   武満徹/混声合唱のための うた     <合同>
   武満徹/小さな空            <合同>
   三善晃/阿波踊り
   信長貴富編曲/ふるさと

以下、PC-VAN SIG『クラシックコンサートホール』より転載&編集

#7310/7310 大ホール
★タイトル (DBM51153)  96/ 7/22  21:19  ( 89)
演奏会・ざらしの日記(20)  野ざらし
★内容

合唱主体のコンサートにいくのは初めて、プログラムも普段なじみのない曲
が多かったのですが、なかなか新鮮な経験で楽しめました。

バードは、ほとんど初体験でしたが、抑制された響きとややロマンティック
で身振りの大きいクライマックスでの表現の対比が印象的でした。ただし、
私は現代におけるスタンダードな表現がどんなものなのかまったく知らない
ので、この評があたっているかどうかは定かではありません。

オーストラリア民謡、これはみなさん楽しそうに歌ってらしてよかったです
ね。団員の方のアレンジで、今回のオーストラリア訪問用のピースというこ
とらしい。林さんと川嶋さんは向かって舞台下手の上方で歌ってらっしゃ
いましたが、あまり、じっとみていると目があっちゃいそうで照れ臭いので、
栗山さんの指揮ぶりを中心にみておりました。

追分節考、これも柴田南雄のシアターピース初体験でした。女性合唱は舞台
に残り、男性合唱団員は客席にちらばって木曽の馬追い歌を歌いながらふら
ふら歩くという趣向。栗山さんの舞台上からの番号札による即興的な指示に
あわせて、特定の曲が特定のタイミングで歌われるという仕組みらしいので
すが、二系列ある記号の意味の違いまではわかりませんでした。

これは明らかに客としても舞台をじっと見つめてる意味はない曲だと思った
ので、後ろをむいたり横をむいたりしながら聞いていました。本当のことを
いうと僕も席をたってどっかその辺に寝そべって聞きたかったくらいで、こ
ういう曲でも客だけは相変わらず小市民的道徳観念を順守しつつお行儀よく
していなければならないのは、ちょっと残念な気がしますね。まあ、これは
ちょっとないものねだりかもしれないけど。

カムイの風は、三善さんの新曲で今回のオーストラリアツアーで初演される
ための「試演」だとか。OMPの曲の中ではこの曲が一番面白かったです。
林さんの貴重な事前の解説は残念ながら読んでいなかったのですが
民族色の濃い野生的な舞
踏風のところは栗山さんの指揮も力強く、私も思わず席から身を乗り出しな
がら聞いてしまいました。ピアノ伴奏もそれなりに親しみやすく、これなら
オーストラリアの人達にもうけるんじゃないでしょうか。

最後は武満さんの混声合唱のためのうた、OMPとコーロカロス合同による
大編成のフィナーレとなりましたが、恐ろしいことに私にとってこれらの曲
は石川セリがスタンダード/すりこみになってしまっているため、終曲のさ
くらを除いてかなりの違和感をおぼえました。これは合唱団や栗山さんの表
現の問題というよりは、歌詞を含めて武満さんの曲自体がもはや、多少時代
の風にふかれてちょっと古めかしいものになってるんからなんじゃないかな、
とも思いました。(こんなこといったらおこられちゃうんだろうな)

特に「死んだ男の残したものは」のシリアスそのもののドラマティックな表
現には、正直いうとちょっと照れ臭いものを感じます。昔、聞いてた吉田拓
郎の歌(「人間なんて」とか「知識」とか)や太宰治やレイ・ブラッドベリ
の小説にも似たような感覚を覚えるんですけどね。ま、これは私だけの病気
なのかもしれないので、あまり気にしないでください。

アンコールはみなたいへん楽しかったです。特に2曲めの阿波踊りは傑作で
ソロで一踊り、
ばーんとはじけた表現をみせてくれたお姉さんには喝采を送りたいと思いま
す。川嶋さんのとなりの人だったから、次はいよいよ川嶋さんのソロダンス
かと思って固唾をのんで見守っていたんですよ(^^)。

3曲目の「ふるさと」は、技巧の面では三善さんやバードの曲とは比べ物に
ならないほどのシンプルなものだったと思うのですが、みなさん実に気持ち
よさそうに歌ってらして、また聴衆の皆さんも心から曲に共感を感じている
のが手にとるように感じられてすばらしかったですね。

かたやプロとはいいながら、ワーグナーのワルキューレみたいなリヴァイア
サン的作品と格闘しながらも、安いだけがとりえだとか、卓袱台だの安食堂
だの(しかも場末の(^^))さんざんいわれている人達が一方にいて、か
たやこんなにシンプルな曲を気持ちよく歌って満場の共感をやすやすとえて
しまう人達がいる。まあ、分裂、四散、変容、粒子化を続ける日本の文化状
況を反映した時代の一こまを垣間見たというところでしょうか。

全体を総括すれば、栗山さんの気合のこもった指揮ぶり、なかなか達者なM
C、そして多様で飽きさせないプログラムで、アマチュアとはいいながら入
場料をとれる芸になっていたと思います。とにかく堅苦しい発表会風でない
ところがよかったですね。林さん、川嶋さん、ご苦労様でした。

*? 新しい経験をさせて頂いたことに感謝の念をこめて挨拶を送る
          野ざらし Nozarashi (dbm51153@pcvan.or.jp) !*

#7314/7314 大ホール ★タイトル (GXH73005) 96/ 7/24 22:20 ( 48) 演奏会>遅ればせながらOMP・カロス合同    怪鳥 ★内容 午前中大雨で人ごとながら気をもみました。天候とお客さんの入り とは大いに関係がありますから・・・ 大変素晴らしい演奏会でした。並べて聴くとOMPとカロスのキャ ラクターの違いがわかります。どこがどう、と分析的に説明するこ とは、私にはできませんが、声やハーモニーの質、表現のスタイル のようなことでしょうか。身内の話で恐縮ですし説明にもならない のですが、カロスは松原と共通点がありそうだし、OMPは湘南市 民コールに似ているように思いました。 1、4声のミサ(バード)   カロスのキャラクターに合っているのでしょう、良い演奏でし   た。ただ、ヨーロッパの合唱団とは歌い方が違うだろう、とい   う感じは持ちました。フランスのフェスティバルでどう評価さ   れるのか興味のあるところです。 2、2つのオーストラリア民謡(信長貴富編曲)   某作曲賞の演奏審査で2年連続、計3曲を歌わせていただいた   信長さんを初めて拝見しました。聴きにきていた松原のメンバー   も「あれが信長さんかあー」と言っていました。   OMPの人たちも仲間の曲を楽しんで歌っている、という感じ   です。かなり凝ったアレンジですね。 3、追分節考(柴田南雄)   シアターピースに積極的にチャレンジしているカロスらしい演   奏で大いに楽しませてもらいました。男声が客席を歩き回りな   がら歌い、ホールの空間が音で埋まるのが面白かったのですが   ステージに残った女声がかき消されて聞こえてきません。計算   したものなら良いのですが・・・   また、女声がドレスで扇を持ち日本風な所作をするのがどうし   ても違和感がありました。意図はあるのだとはおもいますが。 4、カムイの風(三善晃)   三善先生の新作ということでの期待通りのステージでした。こ   の作品に託されたメッセージを十分に伝えてくれる演奏だった   と思います。多少荒削りな面もあったように感じましたが、こ   れからシドニーでの本番に向けてさらに磨きがかかるのでしょ   う。 5、うた(武満徹)   100人以上の合同演奏はどんな具合だろう、と思ったのです   が、声が揃っていて、パートのバランスがきちんとしています   からなんの抵抗感もなく聴くことができました。この曲には大   合唱なりの演奏効果があることを認識しました。   「死んだ男の残したものは」が特に印象的でした。 6、アンコール   「阿波踊り」(三善晃)が抜群に面白かったです。曲ももちろ   良いのですが、客席を沸かせた合唱団の演技力に感心しました 林さん、川嶋さんシドニーでのご活躍を期待しています。
#7318/7318 大ホール ★タイトル (CLASSIC4) 96/ 7/27 9:28 ( 50) 演奏会>カロス・OMPジョイント  96-44    モー ★内容 遅ればせの演奏会報告です。  当日は、台風崩れの熱帯低気圧のおかげで大雨でありました。  会場のチケット預かりのところで「PC-VAN…」というと「はいはい」と さっと封筒を出してくれました。受付してくれた人は、後で川嶋さんの 妹さんと判明。  客は、おばさま比率が異様に高く少々懸念を覚えました。  さて、はじめのカロスのバードですが、人数のせいか 少々、大味な印象を受けました。  OMPが出てくる前に、栗山さんがちょこっと挨拶をされていましたが 「(立川で演奏会をするのは)他に会場が取れなかったから、 しょうがなかった」みたいなことを言ったときに、会場のおばさま達が 「んまっ」と少々むっとしていました。  次にOMPが登場。女声陣の衣装が大変結構でございました(^^) 唐澤さんはこれで前列に行ったのかと勝手に納得しておりました。  オーストリア民謡は、東京都合唱祭の時の唐澤さんの鞭撻調の感想を 読んでおりまししたので、どんな風なのか興味深く聴きました。  編曲のせいか、縦の線が揃いにくそうでしたが、響き自体はOMPらしい 涼やかなものでした。表情が楽しげなのも良いですね。(そんなに 悪くないじゃん)と思いましたが、休憩時間に聴いたら、東京都合唱祭から長足の進歩を 遂げたとのこと。さもあろうと思いました。  追分節考は面白かったというか、少々感動すらしてしまいました。 これは間違いなく日本合唱曲の名曲ですね。 (あと10分ぐらい演奏が短ければ、なお良かったと思いますが) こういう曲は、どんどん海外に紹介していって欲しいものです。  怪鳥さんはが書かれている女声については、席が前のほうだった せいか気になりませんでした。  さて、カムイの風は、林さんが紹介(*解説参照)してくれていたお陰で 随分楽しめることができたと思います。ありがとうございました>林さん。  まだ、滑稽さを伝えられるほどモノにはなっていないようでしたが、 機会があれば、もう一度聴かせていただきたいです。(日本で)  武満さんの「うた」は、曲の魅力の20%ぐらいしか表現されて いないようなもどかしさを感じました。まあ、予想通りでしたが。  とは言え、アンコールの小さな空、阿波踊り、ふるさとは いずれも素晴らしく、全体としては高収穫の演奏会で満足することが できました。     モー
#7319/7319 大ホール ★タイトル (CLASSIC1) 96/ 7/27 11:17 (107) 演奏会>OMP・コーロカロス合同演奏会     唐澤 ★内容 ●バード/4声のミサ(カロス)  カロスを聞くことじたいが久しぶりでした。  すでに他の方がカロスとOMPの響きの違いについて書いていらっしゃいます が、確かにこの演奏会ではキャラクターの違いを聞くことが出来て面白かったと 思います。  もっとも互いに全く違う傾向の曲を歌ったので直接の比較は出来ませんが、 バードは、肉厚の響きだなあと思いました。石造りの建物の中の響きではないで すね。  私は前から4列目くらいの席で聞いていたので、ほとんど直接音ばかりという 音響でしたが、こんなに前列で聞いてもこの演奏会はどの曲も綺麗に響いていま した。このくらい技術の高い演奏なら前の方で聞くのも解像度が高くて良いなあ と思いました。 ●2つのオーストラリア民謡(信長貴富編曲)OMP  東京都合唱祭で聞いたときには、「ひえぇ」と思うほど、「練習中」という感 じでしたけれど、今回はさすがにOMPらしい緻密で強靱なハモリを聞かせても らいました。  強靱な響きといっても、それは土台にあるテクニックのことで、「調子を揃えて クリック クリック クリック」はうきうきしてくるような楽しさがありました。 団員の表情も、楽しげで聞いてて嬉しくなってしまった(^^)  この編曲、オーストラリアでは譜面を欲しがられるかも知れませんね。余分に コピーを持っていった方がいいですよ(^^) ●柴田南雄/追分節考(カロス)  おかげさまで柴田作品もたくさん経験させていただいていますが、この曲は初 めてです。  女声はステージ上で、男声は会場いっぱいに広がって演奏しますが、個々の メンバーの力強さに感心しました。  余談ですが、私のすぐ後ろには昔この曲を演奏したことがあるらしい老夫婦が 座っていて聞きながらあれこれ感想を交わしていました。  私の席からだと、女声が大きく、会場に散らばった男声はちょっと物足りない 感じの音量バランスでした。男声の「追分け節」の背景にたなびくように女声が 聞こえるときっと良いバランスなんでしょうね。 ●三善晃/カムイの風 −青ばと物語− (OMP)  今回の私にとっての目玉がこの曲でした。  ひじょうにダイナミックレンジの広い音楽で、曲も演奏も期待を裏切らない物 でした。  演出ものではないのだけれど、演技を感じました。  演奏者の声に浮かんでくる感情表現もとても良かったと思います。  満足しましたが、余力を感じたというか…、まだこれ以上に良い演奏が出来そ うな感じも受けました。  冒頭、弱音の部分から徐々に盛り上がっていく部分の「弱音の緊張感」とか、 フォルテの限界もまだまだ行けそうです。何しろ曲が出来てから一ヶ月ですから、 これからもっと曲になじんでシドニーでは一回り劇性の大きな演奏が聴けること と、楽しみにしています。  OMPは、現代音楽での混沌を歌ってさえ非常に精密な印象を受ける合唱団な のですが、そのテクニックでさらに「土っぽい躍動」を引き出すことに挑戦して いただきたいと思います。 ●武満徹/混声合唱のための うた より(合同)  120人くらいいたでしょうか。  どの曲も比較的オーソドックスな表現だったと思いますが、実に充実していま した。  また、これほどの人数にも関わらず非常に明瞭度の高い演奏で、言葉が大切に されているなぁと感じました。  「死んだ男の…」などはもう、聴いていて熱くなってしまいました。  「さくら」も久しぶりにこんなに美しい音楽を聴いた気持ちで満たされました。  しかし、さくらに関してはまだ行けると思います。会場の前列で聴いていたこ とももちろん影響していますが、空間に溶けて広がっていくような淡い響きを、 まだまだ追求できるのではないか、この曲は。  それには、この曲に限り「日本の言葉を伴った西洋の音楽」だとでも言うよう な感覚でアプローチしても良いのではないかと思います。  ピッチの精度なんかは十分に良いと思うので、あとは和音の構成音の間の音量 バランスとかですかねえ…良くわかりませんが。  おそらくとても微妙なものなのでありましょう。 ●アンコール ・武満徹/小さな空   団員の方の楽しげな表情が印象的でした。とくにアルトのお二方(笑)   あと、OMPの団内指揮者の方が思わず手を振り回しながら歌っている光景  も面白かったなあ(^^) ・三善晃/阿波踊り   でたな!って感じ。大好きです(^^)   注文を付けるとすれば、男声の口三味線にもっと爆発してもらいたかった。   ばんばんツバをとばして下さい(笑)   踊りもなかなか入ってました(^^) ・信長貴富(編)/ふるさと  一番の歌詞をまるまる斉唱にするなんて、編曲者としてなかなか出来ないこと です。普通ならハモらせずにいられない(^^; でも、すごく効いていました。  なんか難しい曲でしたが、面白いですね。 ----*----  全体を振り返れば、実に楽しく満足感の得られる演奏会でした。とにかく楽し い感じ満載でしたね。  アンコール&自称おまけが沢山あったのは、遠征先でもこのようにサービスす るのでしょうね。  曲もヨーロッパーの伝統的な音楽から、フォークソング、シアターピース、 三善さんの新作初演、武満の歌などなど、一つの演奏会とは言えないほどの幅広 さだったし。  定期演奏会とは違ってこういう楽に聞ける演奏会も本当に良いものだと思いま した。OMP、カロスの皆さんの海外での成果を楽しみにしています。 唐澤

参考:カムイの風について、お客様のための解説(林瑞絵)
 まず、題材はアイヌ民話です。最近マイノリティを取り上げるのが一種流行のようになっていますが、三善先生はずっと前からぜひやってみたいと思っていたそうです。
「青鳩物語」と題された内容は、アイヌの世界観・宗教観に深く関わっています。
 かいつまんで説明すると、アイヌが狩りをして動物を食べることはすなわち、動物に姿を変えた神をもてなすことだというのです。狩りをするときは身を清め正装をして、畏敬の念をもって矢をつがえます。そして獲物は感謝をもって肉を食い毛皮を使い、その亡きがらは丁重な儀式と共に葬ります。そうすると宿っていた神は再生し、再び動物の形をとって人間の世界に来られるというのです。
 葬られるときの捧げ物が立派であるほど、神の格も上がりますが、いい加減なものでまつられると再生できなくなります。この物語の主人公である神も、「ちゃんと木のイナウ(祭具)でお送りしますよ」というアイヌの言葉を無視して本州まで飛んでいき、和人に紙製の幣でまつられたために死骸が腐り悪習を放ち、やっと再生したものの小さな青鳩になってしまった、という話です。人間と共存しての神という発想が面白いと思います。

 この物語を、アイヌの老女(故人)が歌い語っているのをテープから起こして合唱曲に仕立てられています。もとに一部鳩笛が使われているのですが、それも人間の声で表現しています。
 例によって4分の3.5拍子とか出てきてピアノの和音も三善三善していますが、やはり西洋音楽とは違った響きで大変面白い曲になりそうです(曲はもう完成したのですが演奏がまだ全然(^^;)。栗山先生はこういう曲がお好きなので「血が騒ぐ」と言って喜んでいます。

 7/17(水)の練習には三善先生をお招きして、いろいろとご指導をいただきました。そのときの話など。

 上で私は「青鳩物語」について、アイヌの世界観に深く関わっていると書きましたが、だからといってこの「カムイの風」という曲は壮大な叙事詩というわけではありません。時間にして8分ほどの短い曲ですし、内容はかつては大きな鳥、今は人間の言うことを聞かなかったために小さな青鳩になってしまった神がぽつぽつと語るやや愚痴っぽい身の上話です。

 それにどんな曲が付いたかというと。

 よく昔の物語で、本人は真剣なんだけどどこか滑稽なものってありますよね。お祭りの仮面なんかでも、悪魔を追い払うために怖い顔をしているはずなのにどこかユーモラスなものとか。ああいう感じとでも言いますか、民俗的な踊りを思わせるリズムが多用されたり、夜に森の中で突然ギャーギャー鳴いて飛び立つ鳥のような声を女声に出させたり、言葉のリズムに合った変拍子と同時進行に語りを入れたり、面白い曲です。そう、作曲者から演奏に関しての希望がそれでした。

 例によって駄洒落を連発しながら練習する(でも初めはめちゃくちゃ緊張していた)栗山先生を、三善先生は笑いながらご覧になっていましたが、「私の言いたかったことは栗山さんが仰ってくださいました。とにかく、面白くやっていただきたい」ということでした。
 そして自ら、アイヌが鳥を仕留め損ねて悪態をつく様子などを模範演技(?)してくださいました。本当に、あんな細い体のどこからあんなパワーが出てくるのだろうと、いつも思います。


唐澤清彦