合唱団OMP第12回定期演奏会


*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
合唱団OMP第12回定期演奏会  − 歌の消息 −
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
  6月 5日(日) 昭和女子大学人見記念講堂(三軒茶屋)  16時開演

★Motets
  Perotinus (1200頃)     Ex semine rosa - Ex semine Habrahe - Ex semine
    Perotinus              Salvatoris Hodie
    Guillaume de Machaut   Diligenter inquiramus (1300頃)
    Guillaume Dufay        Nuper rosarum flores  (1400頃)

★Magnificat (1989)
    Arvo Pärt                 (エストニアの作曲家)

★混声合唱のための「愛の園」−アウトサイダー1− (1971)
  八村義夫曲  William Blake詩

★合唱のための探偵劇「歌の消息」(委嘱初演)
  池辺晋一郎曲  加藤直作・演出

◆指揮:栗山文昭・宮澤彰  pf:浅井道子
 指定席3000円・自由席2500円・学生1000円
 18:00終演予定。

◆オペラシアターこんにゃく座、劇団黒色テント、メジャーなところでは
中島みゆきコンサートの演出等で異彩を放つ加藤直と、大河ドラマの主題曲等で
有名な多才な作曲家池辺晋一郎との初顔合わせによるステージが実現しました。
 世間に出回り始めたシアターピース・合唱劇・合唱オペラ、そのどれでもない
全く新しいものを創り上げようと試みています。

合唱団OMP第12回定期演奏会・感想


(PC-VAN SIG「クラシックコンサートホール」からの転載です)

#4560/4560 大ホール
★タイトル (MWM06676)  94/ 6/ 5  20:40  ( 36)
演奏会>合唱団OMP第12回定期演奏会   モー
★内容
 まず驚いたのは観客動員力。人見記念講堂が8割方埋まっています!

 さらに驚いたのは歌唱力。はじめのアカペラを聴いて、レベルの高さに
「うむ」と呟いてしまいました。各音声がぴーんと響いているのです!
これで、更に縦の線が合ったら天下無敵なのではないでしょうか。

 今日の曲の中で最も印象に残ったのはペルトのマニフィカートでした。
ペルトは以前、ポール・ヒリアー指揮のヨハネ受難曲を聴いて感動した覚えが
あるのですが、いろんな名曲を書いているのですね。

 八村さんの曲は良くわかりません。現代曲音痴なもので・・・ただ表現力は
かなりあると思いました。もっと強烈でもいいんじゃないでしょうか。
からから!さんは楽しんだんでしょうね(#4546)

 鳴り物入りの合唱オペラ?「歌の消息」。
こういうのは初めてでかなり新鮮な印象を受けました。
舞台の真ん中のスクリーンに写真を映して、スモークを焚いて、照明を駆使して。

 特に面白かったのは出来合いの歌詞にはない台詞を語る時で、
「歌がなかったら?」を団員が(主婦になるというのはOMPの女性の一般的な
見解か)、「私にとっての歌」(栗山さんのハーモニカや、歌が巧かった)
など、中々見ものでした。
 席が遠くて林さんを確定することはできなかったけれど、
「居なくなった歌について もう誰も 噂しない」と
「ちぎっては投げ」
は林さんの声に似ていたような気がしたのですがいかがでしょう。

   モー(MWM06676)

(PC-VAN SIG「クラシックコンサートホール」からの転載です)

#4562/4562 大ホール
★タイトル (NKE44364)  94/ 6/ 6   1:32  (121)
演奏会>合唱団OMP第12回定期演奏会     からから!
★内容
 合唱団OMPの聴衆となって(途中超長いブランクはあるが)はや8年。年々
この合唱団は凄みを増していく。
 上手下手ではない。凄みとしか言い様のないものが彼らの中から滲み出ている。

●Motets(Perotinus,Guillaume de Machaut,Guillaume Dufay)

 OMPに限らず、私はアマチュア合唱団の『古く清澄な音楽の演奏に期待する
透明感』に対する物足りなさ。簡単に言って、ようするにCDで聴く宗教音楽と
の差をずっと感じていた。
 これが、ふと解決してしまったのが去年の都の合唱祭におけるOMPの演奏で
あったと記憶している。それは、石造りの教会の大聖堂でしかあり得ないのでは
ないかと、演奏会の宗教音楽に妙な悟りをひらこうかというタイミングだった。
 しかし、あの演奏会以来OMPのハーモニーの純度には信頼を置いている。
 この演奏もまた、聞き慣れた美しい響きがあった。

 もっとも、どんな演奏会に行っても感じる、ひとつの演奏会の中での出来の善
し悪しと言う部分では、これらの曲が一番、演奏会の練習のなかでしわ寄せを受
けていたのだろうなと感じる苦労のようなものは感じた。
 それがモーさんの指摘するような縦の線の甘さに現れたのだろう。
 指揮者も団内指揮者だし、先生の曲の練習で直前の練習にはなかなか時間がと
れなかったのではないだろうか?(頑張れ宮澤さん!(団内指揮者の人ね))


★Magnificat (1989)  Arvo Part

 寡聞にして勉強不足。しばらく前のペルトブームのときからちょこちょこと聴
いてはいたのだがこの曲は初めて。
 冒頭、女性の Magnificat の歌声…、ソプラノの細く収斂していく響き、一本
の張りつめた絹糸が歌うかのような音。それから、弾かれた弦(イト)が二重に見え
るが如く、ツイと枝分れし、響きあう和音。
 そのようなシャープな視覚的印象が曲を支配したかと思えば、突如わき上がる
重圧な和音。
 まったくこの一曲は最初の一音から捕まれてしまった。
 本当にいい演奏というのはそういうものだ。聴いているうちにぐいぐいと引込
まれた…、などというものでは無い。最初のただひとつの音から打たれ、巻込ま
れてしまう。

 十分に反省したので、OMPの演奏もさることながら、遅ればせながらペルト
の音楽を聴いていきたいと思います。


★愛の園(アウトサイダー1) 八村義夫

 パンフレットで三善晃氏が<焼き尽す凝縮と愛>というタイトルで八村氏の音
楽について寄稿している。

> 栗山さんとOMPのみなさん。八村さんと同じ密度で集中し、同じ優しさで歌っ
> て下さい、愛を…皆さんでなければ掬えない淵から、ひとひらの花びらの愛を。

 この寄稿には八村氏の音楽への集中、一音一音の細部に至るこだわりがぎっし
りと綴られているのだがしかし、聴き終えて思うのは、OMPは三善先生の願い
に答えたと…。

 ほんの二週間前、Choral Space'94 という演奏会でOMPがこの曲を歌ったと
き、「あぁ、現代音楽だな」と思った。クラスター、叫び、etc. 音楽的に似た
部分を多く含みながら、昨年OMPがコンクールで取上げ、全国制覇した細川
俊之のアヴェマリアにはとどかないなと。

 だがたった2週間、ほんの5.6回の練習の間に何を積上げたのだろうか、この
定期演奏会での演奏はまるで違っていた。
 冒頭のしゃくり上げるような音型の息づかいに、瞬時にあの時と違う空気を感
じる。その混沌とした和声の中に、失われた愛の園を描こうとした作曲者の一音
一音が聴えてくる。最大30数声部あるというこの曲の混沌が濁り無く歌われる!?
(その実力はあの、アヴェマリアで証明済なのだが…)
 30数声部というのは、混沌のためではなく、音響、空間を制御するために必要
だったのだということが、ステージ一杯に揺れ動く響きから自然に伝わってくる。
 作曲者の裡にあった必然が。

 ドライな現代音楽はいくらもある。だが、ただの現代音楽的音響効果でなく、
現代音楽に愛を込めて歌えるのはOMPを他において無いのではなかろうか。
 OMPは今年これからさらにこの曲を歌い込んでいくだろう。
 まだまだ楽しみなのだ。

 それから、休憩時間に隣の席の人が「久しぶりに“これがOMPだ”という演
奏を聴いてしまった。こんなのはもう一生聴けない…」と話合っていた。
 わかるな…。


★合唱のための探偵劇「歌の消息」(委嘱初演)池辺晋一郎曲 加藤直作・演出

 現在の音楽、演劇シーンの先端で活躍している加藤直。
 よくこんな大物と仕事をしたものだ。厳しかったね。

 舞台は、(斉藤晴彦の)劇団・黒テントのようでもあり、中島みゆきコンサー
トのようでもあり、加藤直の仕事が感じられる。
 加藤直は東京芸術大学のオペラ科講師だというのだけれど(知らなかった…)
合唱劇というジャンルは、バブリーな日本に定着し損ねた貴族の趣味、オペラな
んかより、ずっと元気のいいジャンルとして発展すると思う。

 合唱劇だから華やかなソリストはいない。
 けれど、それだからこそかつてのオペラにあるような、歌と説明が交互に進ん
でいくような形式張ったものもなく、ソロと合唱が一体で進んでいく。
ミュージカルよりクラシカルで、オペラより身軽で自由。
 知らない人にもっと経験させてあげたい。

 この作品は、加藤直の本と演出がすごく濃かったと思う。池辺さんの曲はあん
まり主張していなかった。終曲はさすがに美しかったけれど。
(反対にこのまえコーロ・カロスがやった『君の受難曲』は林光の音楽は美しか
ったが本がいまいちだった(^^; いまどき夢落ちでおわるなんてなぁ…)

 モーさんも書いていたけれど、本にない、合唱団の人の経験を語るパート、
もしも歌がなかったら…、歌との出会いとか、…なんだか生き生きしていてよか
った。
 しまいにはピアニストが中島みゆきを歌うしね。(さすが加藤直のコネが生き
ている(笑)) いきいきと生きていた。
 ひとしきりどきどきしたり笑ったりしたけれど、終曲の青い光に包まれたス
テージの上で歌われた歌は美しかったです。

                             -----*-----

 栗友会で、OMPとコーロカロス、千葉大学でシアターピースと、その委嘱を
やっていますが、毎年すばらしい作品が生れるのを、これからも楽しみにしてい
ます。

 よい演奏会でした。
                              からから!

唐澤清彦